研究課題/領域番号 |
20K14468
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青木 勝輝 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (80822288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重力理論 / 宇宙論 / 量子重力理論 |
研究実績の概要 |
一般相対論と量子論の不整合性やダークエネルギー、ダークマター、インフレーションといった宇宙論に残された数々の謎の存在は一般相対論を超えた重力理論の必要性を示唆している。本研究の大きな目的は現象論研究と理論研究の両者を相補的に用いることで宇宙を用いた重力理論の検証を行うことである。このためには有効場理論の手法が特に有用であり、本年度は以下にあるような有効場理論に関する様々な現象論研究を行った。また散乱振幅のユニタリー性らを用いることで有効場理論に対する理論的な整合性条件を得ることが可能である。そこで現象論と相補的に、散乱振幅などを用いた理論研究も同時に行った。 具体的には本年度は次のような成果を得た。(1) 前年度に定式化したベクトル場の宇宙論的有効場理論を拡張し、流体・固体・エーテルといった連続体物質に対する宇宙論的有効場理論を定式化した。(2) コンパクト天体といった強重力場では有効場理論の描像が破綻しうることを示し、紫外完全化の効果を取り入れたベクトル場のコンパクト天体解を構築した。(3) スピン2ダークマター模型の新たなシナリオを提案した。(4) 不安定粒子の散乱振幅に対するユニタリー性の条件を第一原理的に導いた。(5) 有効場理論的描像からベクトル場の新たな相互作用を指摘し、そのコンパクト天体解への影響を調べた。(6) 宇宙論を用いた重力理論検証に関するレビューを執筆した。(7) 宇宙論的有効場理論のもつ双対性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では捩率をもつ理論を具体的に解析し、その観測的特徴を明らかにすることを課題としていたが、有効場理論を用いた包括的な模型検証の方が有用であることが判明したため、当初の計画とは異なるが有効場理論を用いた現象論・理論研究へと方針を転換することにした。これは本研究の目的である宇宙観測から重力理論を検証するという目的に沿ったものであり、全体として順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も有効場理論を用いた現象論研究と散乱振幅を用いた理論研究という相補的手法を用いて重力理論の検証という課題へと取り組む。特に前者に対しては数値計算によって理論に対する具体的な観測制限を得ることや有効場理論の定式化を宇宙論以外の背景へと拡張することを目指す。一方、後者についてはユニタリー性だけでなく因果性の条件も組み合わせ、不安定粒子を含むような現実的な模型に対する散乱振幅の整合性条件を導き、その現象論への示唆を明らかにしていく。また捩率をもつ理論の検証という課題にも立ち戻り、宇宙ゆらぎの計算などを通して具体的な重力理論の検証も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響がまだ残っていたため予定していた国際研究会や研究打合せといた国外への研究出張が行えなかったため次年度使用額が生じた。今後は通常通り国外への出張が可能と期待されるため、次年度の国外出張へと使用する予定である。
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