研究課題/領域番号 |
20K14472
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
大神 隆幸 甲南大学, 理工学部, 研究員 (70848845)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブラックホール / 一般相対性理論 / ブラックホール擬似天体 / 天の川銀河 |
研究実績の概要 |
当該年度は、本研究で取り組む「天の川銀河中心に存在する大質量天体の正体はカーブラックホールなのか、そうでなければいったいなんだろうか?」という問いに対し、大きく分けて次の二つの事を行なった。 まず、天の川銀河中心を周回する星S2の運動に関する観測データと比較するため、球対称な重力場モデルを仮定し、その中でもブラックホールと異なる重力場を持つものを、いくつかの論文を参考にして選定した。その結果、Kitamura el al. 2013で考えられている重力場モデルが適当ではないかという結論に至った。この重力場モデルでは、通常のブラックホール解も含め様々なブラックホール擬似天体を、時空計量に現れる3つのパラメータで統一的に議論することができる。これは、本来予定していた「エリスワームホール」、「ブレーンワールドブラックホール」そして「f(R)理論でのブラックホール」の一部も含まれている。 また、当該年度はすばる望遠鏡での観測機会に恵まれなかったため新しい観測データが得られなかったが、Keck望遠鏡やVLTの観測データも含めた比較ができるよう、理論曲線でのフィッティング方法を改良した。さらに、マルコフ連鎖モンテカルロ法によるモデルパラメータ推定は、推定するパラメータの数が増えればより時間がかかってしまうため、高速に実行できるように計算コードの改善を行なった。具体的には、最終的な解析に使用しない初期の部分ではパラメータ空間を粗く探査し、段階的に探査精度を上げていくという方法を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では当該年度に新しい重力場モデルでの星の運動に関するシミュレーションコードを作成する予定だったが、これまでに作成した部分のバグ修正や汎用性のための改善に時間がかかってしまった。また、新型コロナウイルスの感性予防対策に追われ、他の研究者との議論を十分に行うことができなかったのも進捗の遅れの一因である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は予定からやや遅れてしまったが、解析ソフトの作成全体で見れば順調に進捗していると考えられる。また、予定を変更する大きな理由はないため、今後も予定通り研究を進める。 本年度は星の運動をシミュレーションする計算コードを作成し、解析ソフトへ導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で本来予定していた観測や学会への移動がなくなり、旅費に使用できなかったためである。情勢が今後どう変化するか分からないが、遠方への移動が困難になることから旅費は解析用計算機の購入等へ充てる予定である。
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