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2022 年度 実施状況報告書

三次元一般相対論的電磁流体シミュレーションで迫る活動銀河核ジェットの力学進化

研究課題

研究課題/領域番号 20K14473
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

松本 仁  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (70722247)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード活動銀河核ジェット / 相対論的電磁流体シミュレーション / 不安定性
研究実績の概要

昨年度の軸対称二次元相対論的電磁流体シミュレーションにより、磁気極性の反転を繰り返すジェットは、伝播中、磁気中性面で磁気散逸が生じ加速されることがわかった。しかし、ジェットの安定性には、非軸対称モードの不安定性が大きな影響を与えるため三次元性が不可欠である。そこで、本年度は、計算領域の底から境界条件として相対論的ジェットを注入しジェットの伝搬を調べる三次元シミュレーションを行った。

相対論的ジェットは超音速流であるため銀河間媒質を伝搬する際、ジェットの先端領域で衝撃波が形成される。衝撃波を通過した元々ジェット成分である流体要素は、圧縮を受けるがジェット伝搬方向への行き場を失い、ジェット側面に漏れ出ることでジェットを取り囲むコクーン媒質となる。ジェットとコクーン媒質の圧力差が引き金となり、ジェットは過圧縮・過膨張を繰り返すことでジェット半径の振動が生じる。この振動にともなう非軸対称モードの流体不安定性が成長することでジェット境界は不安定となる。

磁気極性が反転しないジェットモデルにおいて、トロイダル磁場の磁場強度をパラメータにし、ジェット伝搬中におけるジェット境界の安定性を調べた。その結果、ジェットの磁気圧がガス圧よりも大きくなると振動にともなう非軸対称モードの流体不安定性の成長を抑えることがわかった。その一方で、トロイダル磁場が強くなるにつれてKink不安定性の成長が確認され、直進的なジェット構造が進行方向に対して曲げられることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本年度の研究で、磁気極性反転ジェットの伝搬ダイナミクスを比較して理解するためのベースとなる、磁気極性が反転しないジェットモデルの伝搬中の安定性の理解が得られた。ジェットのトロイダル磁場強度が増すことで、ジェット半径の振動にともなう流体不安定性の成長は抑えられる一方、Kink不安定性が成長する。Kink不安定性によりジェット構造の軸対称性が崩れると、ジェットの構造がねじれる箇所で電流シートが形成され、磁気エネルギーが散逸する可能性がある。このため磁気極性反転ジェットの三次元性を考慮すると、軸対称二次元シミュレーションで得られた結果より効率的に磁気エネルギーを散逸させ加速できる可能性がある。そのことを検証するため本年度中に磁気極性反転ジェットの三次元伝搬シミュレーションを実行する予定であったが着手には至らなかった。

また、本研究計画では活動銀河核ジェットのダイナミクスを無矛盾に理解するため、回転しているブラックホール周りに降着円盤が構築されたシステムにおいて磁気的に駆動されるジェットのメカニズムを数値シミュレーションを用いて調べることを視野に入れている。上記数値計算を実行するにあたり、数値計算コードの改修を共同研究者の元へ出張し効率的に進める計画であったが、新型コロナウイルスの流行にともない出張が困難となり、コード改修の進展が遅延している。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルスによる行動制限も緩和され出張しやすくなったため、次年度は積極的に共同研究者の元へ赴き、ジェット駆動領域の数値計算を実行するためのシミュレーションコードの改修を加速させる予定である。計算コード改修後は直ちに、回転しているブラックホール周りの降着円盤システムの長時間シミュレーションを実行し、磁気極性反転ジェットの駆動メカニズムを明らかにする。特に、円盤ダイナモ起源により降着円盤およびジェットの磁気極性が反転することが期待されるため、円盤ダイナモからジェット駆動にいたる描像をセルフコンシステントに構築することを目指す。

また、計算コードの改修と並行し、磁気極性反転ジェットの三次元伝搬シミュレーションを実行する。本シミュレーションでは、ジェット伝搬中の磁気散逸およびそれにともなうジェットの加速に焦点をあてるため、計算領域の底から境界条件として磁場をともなった相対論的ジェットを注入し伝搬させる。磁気極性が反転するタイムスケール、磁場強度および磁場構造(トロイダル磁場とポロイダル磁場の比)を系統的に変化させ、磁気エネルギーの散逸効率を特徴づけるパラメータの理解を目標とする。

次年度使用額が生じた理由

全世界でコロナウイルスが流行し、想定していた国際会議への参加を見送ったため、その分の旅費が未使用となり次年度使用額が生じた。コロナウイルスへの対応も緩和されてきており、次年度は積極的に研究会等に参加し研究発表を行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Magnetic support for neutrino-driven explosion of 3D non-rotating core-collapse supernova models2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Jin、Takiwaki Tomoya、Kotake Kei、Asahina Yuta、Takahashi Hiroyuki R.
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 516 ページ: 1752-1767

    • DOI

      10.1093/mnras/stac2335

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Magnetohydrodynamics with Swirling Flow: Astrophysical Impacts via Plasma Outflows2022

    • 著者名/発表者名
      Jin Matsumoto, Youhei Masada
    • 学会等名
      Plasma Explosions in the Universe
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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