新物理理論と密接に関係しているヒッグス構造の決定には、発見された質量125GeVのヒッグス粒子(h125)の精密測定と付加的ヒッグス粒子の直接探索の双方向からの探索が重要である。h125の結合の標準理論予言からのずれは、新たなヒッグス粒子の質量の上限を与え、崩壊分岐比にも影響を与える。今後の加速器実験でのh125結合精密測定に備え、量子補正を含めた精密計算は非常に重要である。 2023年度では、拡張ヒッグス模型におけるヒッグスボソン崩壊過程計算ツール"H-COUP"をh125の崩壊分岐比と付加的ヒッグス粒子の崩壊分岐比を同時に計算できるようにヴァージョンアップを行い、H-COUP version3のマニュアル論文をComputer Physics Communicationsに投稿し、出版受理された(掲載予定)。論文では、h125の崩壊率と付加的ヒッグスボソンの崩壊分岐比の両者について量子補正を含め、また摂動ユニタリティ等の理論的制限を課して計算し、相関関係を評価した。両者を同時に量子補正を含めて計算することの重要性を示した。 研究期全体(2020年度~2023年度)では、拡張ヒッグス模型の付加的ヒッグス粒子の崩壊分岐比の量子補正効果の理論的研究を一貫して進めた。その結果としてソフトに破れたZ2対称性をもつTwo Higgs doublet models、Higgs singlet model、Inert doublet modelにおいてすべての付加的ヒッグス粒子の2体崩壊の全過程の崩壊分岐比の数値計算プログラムを完成させ、公開することができた。また、各論文では数値計算によって摂動ユニタリティと真空安定性によるパラメーター空間への制限についても研究し、h125の精密測定、付加的ヒッグス粒子の直接探索、理論的制限の3方向からの模型の検証が重要であることを明らかにした。
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