研究課題/領域番号 |
20K14477
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
大塚 啓 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 学振特別研究員 (80777988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超弦理論 / モジュライ / ブローアップ / スワンプランド / CP対称性の破れ |
研究実績の概要 |
本年度は,湯川結合のもつ対称性を明らかにするあたり,近年発展が著しいモジュラー対称性に基づくフレーバー模型(“モジュラーフレーバー模型”)に注目した.モジュライ場の期待値が素粒子のフレーバー構造・CP対称性の破れを決定する重要な役割を果たすことが知られていたが,その固定機構は明らかにされていない.本研究では,フラックスコンパクト化を用いたモジュライ固定機構に注目した.現象論的に好ましいモジュライ場の期待値の導出に成功し,超弦理論のランドスケープにおけるモジュラーフレーバー模型の統計的性質を明らかにした.トーラスコンパクト化において自発的なCP対称性の破れは困難であり,カラビ・ヤウ多様体において初めて自発的なCP対称性の破れが可能になる.弦理論のランドスケープにおいて,統計的に有意に好まれるモジュライ期待値と現象論的に好まれるモジュライ期待値はほぼ一致しており,一連の研究は,弦理論に基づくトップダウンアプローチと現象論的な観点に基づくボトムアップローチの架け橋になることが期待される.今後は,様々なカラビ・ヤウ多様体上の弦理論において,モジュラーフレーバー模型の埋め込みを検討していくことが望まれるが,次年度に研究を推進していきたい.
近年,量子重力理論の有効理論には非自明な制限があり,それを明らかにしようとするスワンプランド問題が注目を集めている.本年度は,全てのモジュライ場を固定可能な特定の背景幾何において,(I)真空からプランク長を超えて離れていくと,無限個の無質量粒子が現れるという距離予想,(II)安定なドジッター空間が得られないというドジッター予想の検証を行った.その結果背景磁場が,弦理論のランドスケープとスワンプランドの境界はを明確にすることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた「ブローアップモードの有効理論の導出」について進捗は遅れている.しかしながら,当初計画していなかったモジュラーフレーバー模型,自発的なCP対称性の破れに関する研究が進展した.また,背景磁場とスワンプランド問題の間に非自明な関係が存在することが明らかになった.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度終了していないブローアップモードの有効理論の導出を行い,実験・観測データとの比較検証を行う準備を行う.当初の研究計画の実施のみならず,当初の研究計画より広範な分野の研究課題を遂行予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染状況に伴い,国内外の出張が実現できなかったため,当該助成金が生じました.次年度の研究計画を遂行するにあたり,大規模数値計算を行うのに必要なパソコン機器の購入,及び国内外出張への充当を予定しています.
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