本年度は昨年度に引き続き、近年発展が著しいモジュラー対称性に基づくフレーバー模型(“モジュラーフレーバー模型”)に注目した。特に、IIB型超弦理論に基づく3世代模型において、フレーバー対称性、CP対称性、モジュラー対称性がエクレティックフレーバー対称性の枠組みで統一的に記述されることを明らかにした。そして、IIB型超弦理論に基づく3世代模型において、モジュライ場の期待値がモジュラー対称性の固定点に固定されることを指摘した。このことは、モジュラー対称性の離散対称性が超弦理論の有効理論に現れることを示唆している。
本研究は、オービフォールド特異点が解消された余剰次元空間上の超弦理論の有効理論を解析し、特異点解消に付随して現れるブローアップモードの物理を介して超弦理論の痕跡を探ることを目的としていた。 研究期間全体を通じて実施した主な研究成果は以下の4点である:i) オービフォールド上の指数定理は、バルク上の磁場と局在化した磁場と曲率の寄与で決定され、局在化した磁場は新たなカイラルで無質量モードの存在を予言すること、ii)トーラスコンパクト化において自発的なCP対称性の破れは困難であり,カラビ・ヤウ多様体において初めて自発的なCP対称性の破れが実現可能であること、iii)特異点に局在化するブローアップモード間のフレーバー対称性は非可換離散対称性で与えられ、滑らかなカラビ・ヤウ多様体の持つシンプレクティックモジュラー対称性に埋め込まれること、iv)超弦理論のコンパクト化を通じて、3世代模型にモジュラー対称性の部分対称性が弦理論のランドスケープに現れることを示した。
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