研究課題/領域番号 |
20K14478
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山口 康宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 博士研究員 (00733932)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / ヘビーハドロン / ハドロン間相互作用 / パイオン交換力 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の研究課題について成果をあげた。 (1)コンパクト5クォークとハドロン分子を考慮したPcsペンタクォークの構造研究: LHCb実験より新たに報告されたPcsペンタクォークに関する研究が行われた。これまでのPcペンタクォーク研究の模型を発展させ、コンパクト5クォーク状態とハドロン分子状態の双方を考慮したメソン-バリオン分子状態の束縛・共鳴状態の解析が行われた。南部・ゴールドストーンボソン交換力、コンパクト5クォーク状態との結合により導いた近距離力をポテンシャルとした模型を構築した。解析の結果、反DメソンとXicバリオンの閾値下に共鳴状態が得られ、それらの質量と崩壊幅はLHCb実験より得られたものと一致するものであった。加えて未だ報告のない新たな共鳴状態の予言も行われた。 (2)Threshold cuspとしてのPcペンタクォーク: これまで報告されてきたPcペンタクォークは、新たなエキゾチックハドロンの候補として期待される一方、閾値近傍に現れるThreshold cuspである可能性も議論されている。本研究では、Bs -> J/psi p pbar 過程を考え、DbarSigma_cループを伴う散乱振幅の解析を行った。その結果、導入したループに寄与により、共鳴状態がなくてもLHCb実験のPc(4337)に関するデータを説明することができた。得られた成果は実験で報告されてきた"Pc状態"の正体を探る上で重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年に報告されたPcsペンタクォークについて、コンパクト5クォーク状態との結合とチャームメソン-チャームバリオン間力による模型の構築が行われた。このことは、本研究課題の目的の一つであるハドロン相互作用の構築に対して重要な成果である。また、ハドロン間相互作用によるThreshold cuspについて研究もなされた。エキゾチックハドロン研究に対して様々な視点からアプローチすることは、未だ全貌が掴めていないエキゾチックハドロンの正体を探る上で重要である。当研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
エキゾチックハドロン研究においてハドロン間相互作用は重要な役割をしている。長距離力に関しては南部・ゴールドストーンボソン交換力、特にパイオン交換力でよく記述されてきた。一方で、近距離で働く力は未だ解明されていない。近距離では、ハドロン内部のクォークの動力学が重要となると期待される。そこで次年度は、ハドロン内部のクォークに着目したハドロン間相互作用の構築を行い、Pcや近年報告されたTccなどのエキゾチックハドロンの性質解明とハドロン相互作用の役割について議論を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延の影響で国際会議等の現地開催が取りやめとなったため今年度における支出額が予定よりも少額になり、次年度予算使用額が生じることとなった。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、テレワークや延期となった国際会議への出張に係る費用等として使用する。
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