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2020 年度 実施状況報告書

複素ランジュバン法の改良による符号問題の解決に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K14480
研究機関大阪大学

研究代表者

土居 孝寛  大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (50804910)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード符号問題 / 複素ランジュバン法 / 原子核ハドロン物理学 / 物性物理学 / 冷却原子
研究実績の概要

有限密度における量子色力学や高温超伝導などの物理的に興味のある多くの系において計算精度を著しく低下させる符号問題が頻繁に生じる。符号問題は現在も未解決な計算上の問題であるが、複素ランジュバン法が解決法の候補として注目されている。本研究は複素ランジュバン法が破綻する原因を詳細に調べて手法を改良し、符号問題が現れる系の第一原理計算に応用する事を目的とする。
2020年度の研究実績として、1次元2成分フェルミオン系の計算が完了した。具体的には、2成分間の化学ポテンシャルに差があり符号問題が生じる系において、少数の成分のフェルミオン(ポーラロン)のエネルギーを測定した。我々の理論計算と既に知られている厳密解がよく一致しており、この系において複素ランジュバン法は機能することを示すことができた。更に、この系において複素ランジュバンが機能する理由が、フェルミオン行列の固有値が全て正であることを突き止めた。計算したパラメータの範囲内でフェルミオン行列の固有値が常に正であることが明らかになった。2次元・3次元の2成分フェルミオン系において複素ランジュバン法が機能しない場合があることが先行研究で知られているので、今後の研究で固有値の性質の次元依存性についても調べることは、複素ランジュバン法の有効範囲について調べる上で非常に重要である。
2021年度以降の2次元・3次元と次元を上げた理論計算を実験と比較し、複素ランジュバン法の有効範囲を調べ、破綻する場合はその理由を探る。また、今年度の研究の中で3成分フェルミオン系を複素ランジュバン法で計算することが可能であることがわかったので、今後の研究で進めたい課題である。
研究発表は4回行い、上記1次元系のポーラロンの成果について論文執筆中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度中に1次元系の論文を投稿・出版までする予定であったが、間に合わなかった。これについては2020年度の反省点である。ただし、計算手法については計算コードの整理、計算コードの拡張作業(次元変更・相互作用の形の変更)、並列計算の勉強及び実装などが進み、これについては予定より早く進んだ。従って、研究全体としてはおおむね順調に進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

2,3次元の2成分フェルミオン系の物理量を複素ランジュバン法で計算し、実験結果と比べる。複素ランジュバン法の性質上、実験結果とずれるパラメータ領域が生じると予想されるが、その領域の範囲、どれだけずれているか、ずれる場合の複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布の変化などを定量的に調べる。特に、複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布については、指数関数的に減衰すれば複素ランジュバン法が機能することがわかっているが、指数関数的に減衰しない場合に複素ランジュバン法が機能するかどうか、機能しない場合の厳密解とのずれについてはあまり調べられていない。1次元系など特殊な系では理論的な厳密解が知られているが、通常は厳密解がわからないので、厳密解として実験結果を活用するというのが本研究の特徴の1つである。技術的な最終目標は、複素ランジュバン法が予言できるパラメータ領域を広げることができるよう拡張することを目指す。
手法が活用された暁には、有限密度におけるクォーク・グルーオン系や2次元格子上の強結合フェルミオン系などに応用し、中性子星の内部構造や高温超伝導体の性質の予言など、これまで理論的に予言することが難しかった系に複素ランジュバン法を応用する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からほぼ全ての研究会・学会が中止またはオンライン開催になり、現地に出張することがなくなった。そのため出張費が必要なくなり、2020年度予算は余ってしまった。2021年度は少し状況が緩和することが期待できるので、無理の無い範囲で研究会・学会の現地でのコミュニケ―ションを取り、研究を進めるための情報共有・議論を進めたい。ただし、状況が緩和されず2020年同様に出張しない可能性もあるため、そのような場合には計算機を買い、研究をスムースに進めるために予算を活用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Low-dimensional fluctuations and pseudogap in Gaudin-Yang Fermi gases2020

    • 著者名/発表者名
      Tajima Hiroyuki、Tsutsui Shoichiro、Doi Takahiro M.
    • 雑誌名

      Physical Review Research

      巻: 2 ページ: 033441-1, 7

    • DOI

      10.1103/PhysRevResearch.2.033441

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 複素ランジュバン法による フェルミ原子気体におけるポーラロンの研究2021

    • 著者名/発表者名
      土居孝寛
    • 学会等名
      第76回年次大会
  • [学会発表] Complex-Langevin study of polaron in Gaudin-Yang Fermi gas with population imbalance.2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Doi
    • 学会等名
      SuperFluctuations 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] Study of polaron in 1D 2-component Fermi gas by complex Langevin method2020

    • 著者名/発表者名
      土居孝寛
    • 学会等名
      第5回クラスター階層領域研究会
  • [学会発表] 複素ランジュバン法による 2成分フェルミ原子気体における ポーラロンの研究2020

    • 著者名/発表者名
      土居孝寛
    • 学会等名
      2020年物理学会秋季大会

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公開日: 2021-12-27  

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