研究課題/領域番号 |
20K14481
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高倉 理 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員 (30811525)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / POLARBEAR実験 / Simons Array実験 / 雲モニター |
研究実績の概要 |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光ゆらぎ観測は、宇宙誕生直後のインフレーション等を探索することができるため、南極やチリ・アタカマに設置した望遠鏡を用いた観測実験が盛んに行われている。しかし、大気中の雲が生む偏光の混入による系統誤差が懸念される。 本研究の目的は、チリ・アタカマの観測所に赤外線カメラを用いた雲観測モニターを設置し、望遠鏡のデータとの比較から、雲の影響を調査することである。しかし、本年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、雲観測モニター開発、チリ観測所への設置は達成できなかった。 一方で、これまでに取得したPOLARBEAR望遠鏡のデータを解析することで、雲の偏光信号が実際にどの程度の系統誤差になりうるかを、より現実的に推定した。雲が有意に検出された観測から雲の信号の角度スケールや分布を調査した。角度スケールは概ね方位数の4乗に反比例するスペクトル、頻度分布は対数正規分布でモデル化できそうであることを確かめた。このモデルを利用し、データ選別で取りこぼす影響を評価した。その結果、POLARBEAR実験では20%のデータを取り除くことで、雲の影響を統計感度より十分小さく抑えることができていることが分かった。しかし、次世代CMB偏光観測実験では統計感度が向上するため、より薄い雲まで取り除く必要があり、雲モニターが役立つだろう。本研究成果は、CMB systematics and calibration focus workshopで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、海外渡航等が制限されたため、これまでに開発・設置したチリ観測所の雲モニターの修理・改善ができなかった。 一方、これまでに取得したPOLARBEAR実験のデータ解析を精力的に行い、雲の系統誤差のより現実的な見積もりや、データ選別の見直しによる科学観測の統計量改善などの成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究結果を学術論文にまとめ投稿する。また、雲モニターを製作し、日本で試験運用する。チリへの渡航が可能であれば、チリ・アタカマの観測所に設置、運用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、自宅就業が推奨されたため、自宅就業でも可能なデータ解析による研究活動に取り組んだ。その結果、装置開発に使う予定だった物品費、及び、チリ・観測所に設置するための旅費が不要となった。学会等もオンライン開催となり、参加費が不要となるケースがあり、予算を使う必要がなくなった。今後、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いた後、雲モニターの開発、及び、チリ観測所への設置を行う。
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