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2020 年度 実施状況報告書

新たな解析モードを用いたヒッグス粒子とcクォークの結合定数の検証

研究課題

研究課題/領域番号 20K14489
研究機関大阪大学

研究代表者

廣瀬 穣  大阪大学, 理学研究科, 助教 (30816880)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードヒッグス粒子 / 半導体検出器 / ATLAS実験
研究実績の概要

研究計画の初年度である本年には、2021年に再開されるLHC加速器の運転に合わせて、ATLAS検出器を用いたデータ取得のための準備を行う。具体的には、内部飛跡検出器のひとつであるシリコンマイクロストリップ検出器の性能を監視するシステムの開発を進める。本研究では、大統計を用いることで初めて可能となる新たな解析手法を開拓する計画である。2021年からの三年間で、これまでに取得済みであるデータの約二倍以上の統計量を目指す上で、質の良いデータを効率よく収集するための準備を行なうことが今年度の研究の目的であり、本研究の達成において欠かせないステップとなる。
シリコンマイクロストリップ検出器は、cクォークを同定するために用いる粒子飛跡の再構成の要となる検出器である。すでに10年以上の運用期間を経ているため、この検出器において放射線損傷による粒子検出効率の悪化などがこれまでの運用において確認されている。検出効率が低下すると、当然ながら信号事象を同定する効率も下がる。しかし、より問題となるのは、背景事象を間違えて信号事象だと同定する確率も上がることにある。cクォークの同定は他の種類のクォークやタウ粒子との誤同定が本質的に多くなってしまうため、これを避けることが大きな目的である。
そこで、検出器の性能を監視し、問題が起こった際に即座に検出器の運転にフィードバックをかけるためのWebベースのソフトウェアの開発を行なった。開発は順調に進み、次年度に始まるデータ取得に向けての準備は整った。本研究に関して、共同研究を行った所属研究室の学生が、日本物理学会年次大会にて発表を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

COVID-19の世界的流行を原因とした行政による渡航制限のため、実験の本拠地であるスイスにある欧州原子核研究機構(CERN)への渡航予定は中止となった。現地において進める予定であった検出器の性能モニタリングシステムの開発や、現地研究者との打ち合わせなどは日本からリモートで行わざるを得なかった。しかし、基本的には特殊な機器を必要としないソフトウェア開発であったため、予定していた開発は概ね順調に進んだ。

今後の研究の推進方策

上記のCOVID-19の影響により、今後CERNへの渡航がどの程度可能かは現在のところ未知数であるが、可能であれば実験データ取得前に実験現地に渡航し、これまでに開発したソフトウェアの試験運用などを行う。不可能な場合、現地研究者と協力しリモートからの試運転を試みる。また、その後、実験データ取得のための検出器運転と問題への対処も、可能であれば同様にできる限り現地で、不可能であればリモートで行う。
これらの検出器の運転およびデータ取得と並行し、今後は本格的にデータ解析を開始していく。研究のポイントは主に二点ある。ひとつ目は、cクォーク同定アルゴリズムの改良、ふたつ目はW粒子とヒッグス粒子が同時に生成される事象を用いた解析の実行可能性を探る解析である。
cクォーク同定にはこれまで、cハドロンの直接再構成に関連した情報を直接用いていない。これらの情報がどの程度同定効率を改善するのかを、大統計のデータを用いることで検証する。その他、粒子が検出器に落としたエネルギー情報も、同定効率を改善する可能性があるため、これも検証する。
W粒子とヒッグス粒子が同時生成される事象は、ヒッグス粒子がbクォーク対に崩壊する過程では解析が進んでいるが、cクォーク対に崩壊する過程ではこれまで解析されていない。終状態に含まれる電子やミュー粒子の個数がひとつしかないという特徴から、既存の解析結果と比べて探索感度が下がってしまうが、既存の結果と独立な結果として結果を合わせることにより、全体として探索感度を大きく向上させることが可能となる。よって、この終状態を用いた探索を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19による行政からの移動制限により、実験現場であるスイスへの渡航が中止となった。また、国内学会もリモート開催となるなど、予定していた国内旅費などの執行も少なくなった。その分、次年度以降へと延期となったイベントも多いため、次年度以降に予算を回し、大半を旅費として使用する予定である。しかし、今後現地で予定している検出器運転をリモートから行う必要が生じた場合などは、日本国内での研究環境を拡充するために物品費などとして執行する可能性がある。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] 欧州原子核研究機構(CERN)(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      欧州原子核研究機構(CERN)
  • [国際共同研究] オックスフォード大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      オックスフォード大学
  • [国際共同研究] モントリオール大学(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      モントリオール大学
  • [国際共同研究] DESY(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      DESY
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験シリコンストリップ検出器の性能モニタツールの開発2021

    • 著者名/発表者名
      岩田和志, 南條創, 廣瀬穣, 音野瑛俊, 廣瀬茂輝, 山内大輝, 他アトラスSCTグループ
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)

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公開日: 2021-12-27  

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