2021年度においては、大阪大学核物理研究センターにて2020年度末に採択された新たな実験計画の遂行に向けて実験計画と実験準備を進めた。 実験準備として、20Ne原子核の励起状態からの崩壊粒子測定に不可欠なシリコン半導体検出器の調達をおこなった。また新型ガス標的に必要となる真空隔壁の組み立てと必要な架台、及び標的監視システムの構築を進めた。同シリコン半導体検出器については、2021年6月及び2022年3月に原子力科学研究所にて、2021年7月及び12月に神戸大学タンデム加速器施設にて、検出器の波形情報を用いた粒子識別と時間情報を用いた粒子識別の性能をそれぞれ確認を行う実験を遂行した。その結果の一部は2021年9月の日本物理学会にて発表を行った。 その一方、大阪大学核物理研究センターで行われていた施設工事に関わる施設検査が2021年度内には終了せず、共同利用実験の利用再開が行われなかったため、当初計画していたように新規に構築した実験システムを用いて新たな実験データを取得することはできなかった。 しかし、2021年度にはこれまでの実験結果を本課題の視点から20Ne原子核のアルファ凝縮状態の探索に主眼を置いて解析と議論を進め論文の形にまとめ、Physics Letters B誌に投稿し受理され公表された。本論文の研究成果は、大阪大学と京都大学とで協同プレスリリースを行い公表した。この成果は、20Ne原子核におけるアルファ凝縮状態の候補を16O原子核の励起状態の関係から初めて指摘するものであり、本課題の最終目的である、20Ne原子核におけるアルファ凝縮状態を明確な同定に非常に大きく資する結果となった。
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