研究課題/領域番号 |
20K14491
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
信川 久実子 近畿大学, 理工学部, 講師 (60815687)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線天文学 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
超新星残骸 (SNR) は銀河宇宙線の起源と考えられている。銀河系内のSNR W51Cをすざく衛星で観測し、低エネルギー宇宙線が星間物質中の中性鉄原子を電離することで放射されたと考えられる中性鉄輝線を2.0σの有意度で検出した。またW51C近傍のHII領域G49.0-0.3からは3.4σの有意度でヘリウム状鉄輝線を検出した。G49.0-0.3からのX線放射は、温度~3.0 keVで元素組成比が~0.5太陽組成のプラズマであった。これはO型星からの星風で生成されたと考えられる。これらの結果を査読付き論文にまとめ受理された。並行して、銀河系中心の西側の領域に存在する超新星残骸で、低エネルギー宇宙線起源の中性鉄輝線の系統的な調査を行った。 電離率、中性鉄輝線、ガンマ線放射に寄与する宇宙線陽子のエネルギーはそれぞれ異なるため、3つの観測量を同じ場所で観測すれば、広帯域な宇宙線の情報が得られる。そこで中性鉄輝線とガンマ線が両方観測されている領域で電離率を測定するため、電波望遠鏡の観測提案を行い、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともとの予定では、宇宙線起源の中性鉄輝線放射と、硬X線放射、ガンマ線放射を組み合わせて研究を進める予定だった。超新星残骸W51Cの結果は、ガンマ線だけでなく電離率との関連にも注目するきっかけになった。電波望遠鏡の観測提案が採択された超新星残骸における電離率の情報を今後得ることができるだろう。また新たにいくつかの超新星残骸から中性鉄輝線放射が見つかり、系統的な情報を得る段階に移行しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙線起源の中性鉄輝線を放射している天体を引き続き探査する一方、観測提案が採択された電波観測のデータを解析し、電離率、中性鉄輝線、ガンマ線放射を組み合わせた研究を行う。また必要なら電波観測の観測提案を行い、電離率測定のサンプルを増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で今年度も研究会・学会がオンライン開催になり、旅費がかからなかったため、次年度使用額が生じた。翌年度の旅費として使用する。
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