研究課題
本年度はCOVID-19の直接的影響(実験の中止など)は受けずに実験を実施することができた。ただし、実験施設側のマンパワーリソースの減少やそれによる加速微粒子の速度出しノウハウの喪失、衛星プロジェクト搭載観測装置の較正実験を優先した実験装置利用など、様々な間接的制約・影響があった。国内実験においては、2022年11月16日に無事打ち上げられたNASAの新型ロケット「SLS」に搭載されたダスト検出器「CLOTH」の較正実験において、これまで困難であった10ミクロンオーダーの微粒子を単発でダスト検出器に衝突させる方法を確立することができた。昨年度の報告のとおり、単発衝突手法の鍵となる技術そのものは確立できていたが、散弾で撃ち出した微粒子群がストッパー板に衝突する際に発生する振動ノイズが測定信号に混入していることが発覚し、本年度はその除去方法の検討に時間を費やした。結果的にダスト検出器をチェンバー上部から吊るし、ストッパーとの距離も従来よりも大きくするなどして、振動ノイズを十分に低減することができた。その結果、従来想定していたよりも検出感度が高いことがわかり、より多くダストを検出できうることが示唆された。米国MITでの実験では、昨年度の実験体制再構築を進め、安定的にデータ取得できる状況までたどり着いた。しかし、COVID-19以前の超高速度を達成できない状況が続いている。これはレーザーの出力や集光レンズの設置距離といったノウハウが、先方のスタッフや学生の異動により失われてしまったことが大きく影響していると考えられる。成果発表としては上述のダスト検出器の較正実験結果等で4件の国内発表を行った。
4: 遅れている
本研究課題とは別に参画している衛星プロジェクトのエフォート率が継続的に大きいことが、研究の遅れの大きな理由である。また、MITでの実験に2年 のブランクが空いてしまったこと、それにより先方のマンパワーリソースが減少したことも影響している。
他プロジェクトのエフォートの軽減が見込めないことから、比較的簡便に実験室で実施可能な自由落下衝突実験を主体とする方策を検討している。それにより衝突速度域はメートル毎秒オーダー以下に限定されるが、月面有人探査などで懸念されているダストの舞い上がりと同じ速度域であるため、そのような分野での貢献が可能と期待している。
使用予定額として最も大きなオシロスコープの購入について、デモ品を購入できたことで費用を大幅に削減することができたため。次年度の使用計画は主に実験 用センサ供試体の追加購入、信号読み出し回路の部品調達を想定している。
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