本年度は、昨年度確立した10ミクロンオーダーの微粒子を単発でダスト検出器に衝突させる方法を用い、2022年11月16日に無事打ち上げられた圧電PVDFフィルムセンサ-多層断熱材一体型ダスト検出器「CLOTH」の地上較正データを取得した。具体的には、13個の有効データを取得し、宇宙空間で想定される10ミクロン程度のダストを十分に検出できることがわかった。成果発表としては、国際学会2件、国内学会2件を行った。 全体を通した成果としては、研究開始当初掲げた圧電PVDFフィルムセンサを用いたダスト検出器の質量独立推定法の確立という目標には達しなかったが、本研究課題を進める中で確立した、10ミクロンオーダー微粒子の単発衝突手法や、圧電PVDFフィルムセンサと宇宙機用多層断熱材を組み合わせたダスト検出器の技術確立において、重要な成果を得ることができた。圧電PVDFフィルムセンサを用いた従来のダスト検出器は、軌道上での温度や、宇宙機表面の光学特性の制約により、センサ面積の上限に強い制限があったが、本研究課題の過程で確立した圧電PVDFフィルムセンサ-多層断熱材一体型ダスト検出器は、宇宙機表面の大部分を覆う多層断熱材にダスト検出機能を与えることで、宇宙機そのものをダスト検出器にする革新的技術である。その宇宙実証機であるダスト検出器「CLOTH」は、NASAの新型ロケット「SLS」により2022年11月16日に打ち上げられ、半年間に多数のダスト衝突と思われるイベントを検出した。現在、成果論文の発表に向けて、データ解析を進めている。
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