研究課題/領域番号 |
20K14497
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南 雄人 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (80788240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / 前景放射 / 宇宙複屈折 |
研究実績の概要 |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を観測する複数の検出器間の相関を用いることで、検出器の回転に関する較正精度を一桁改善することに成功した。これまでは、検出器ごとの自己相関しか見ていなかった。検出器の間の相関を見ることで、実質的に検出器の数の二乗の検出器で観測するような精度を達成できるというアイデアであった。これを、現実的なシミュレーションデータを用いて実証し、論文として公表した。 また、本研究を発展させることで、CMBの偏光面が138億年かけて我々のところまで飛んでくる間に回転される「宇宙複屈折」という新しい物理事象を測定する手法も開発した。この手法を過去の観測データに適用することで、宇宙複屈折の兆候をを99.2%の確からしさで観測した。その際に、過去の観測データや理論モデルから、特定の状況下では前景放射の未知の物理事象の影響がないという知見も得られた。この新物理探索についても、論文にして公表した。本論文は雑誌社によって、特に重要で興味深く、よく書かれていると判断され注目論文に選ばれた。 さらに、宇宙を満たしていると考えられているダークエネルギーやダークマターの候補となる未知の粒子と宇宙複屈折との関係を、理論的側面から示すことに成功した。99.2%の新物理の兆候が本当であれば、ダークエネルギーやダークマターの謎を解明するヒントになる。これまでの研究では観測者の場所ごとに宇宙複屈折の回転角度が異なる可能性を無視していたが、本研究では観測者の場所依存性も考慮した初めての研究となった。この研究も論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、望遠鏡の設置など、海外へ行っての作業はできなくなってしまった。しかし、方針を転換し新たな解析手法を考案することができた。さらに、新たな解析手法を公開されている過去の観測データに適用することで、新しい物理事象の兆候を観測できたため、研究は想定以上に進展している。データ解析の際には、購入した計算機が大いに役立った。 また、新しい物理事象の兆候を観測できたおかげで、世界中の研究機関からセミナーの依頼が来ており、研究成果を広く示すことにも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染は未だ収まらないため、過去の観測データを使った新しい物理事象探索を重点的に続けていく計画である。今年度開発した手法だけでは精度が足りず、新しい物理事象の兆候を、「新物理の証拠」や「新物理の発見」につなげることは難しい。そのため、発見感度を上げる新たな手法を考えていきたい。新たな手法を様々な過去の観測データに適用することで、新しい物理事象が本当にあるのか、それとも統計的ふらつきであったのかという問いに答えを出せるよう研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外での研究ができなくなり、国際学会での現地発表がなくなった。そのため、旅費の多くが使用されなかった。次年度以降は感染状況によっては、海外の研究会での発表に使う計画である。また、複数の論文を執筆する計画であり、掲載料にも利用する。
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備考 |
新しい物理事象の兆候を観測したため、プレスリリースを出した。
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