研究課題
加速器を用いた実験において半導体検出器や集積回路(ASIC)などの半導体デバイスは、強い放射線環境下により特性劣化、誤動作、破壊といった現象に見舞われる。集積回路はチップ内に多くの機能を集積されているため、放射線による動作不良となった場合に集積回路内部のどこでどのように不具合が発生しているのか知ることが難しく対策が取りずらい。本研究では、集積回路で使われる基本的な素子であるMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)を研究対象とし、設計パラメータの違いによる放射線照射効果への影響を調査した。放射線源は量子科学技術研究開発機構(QST)高崎量子応用研究所にあるコバルト60照射施設にてガンマ線を利用した。今回利用した65nmCMOSプロセスにおいては、デバイスサイズが1umよりも小さい場合は1MGyを超える範囲でデバイスシミュレーションで示される初期性能から逸脱することがわかった。NMOSよりもPMOSはより大きな影響を受ける。全体の傾向としてしきい値電圧の上昇とオン電流の減少が見られ、素子サイズが大きくなるにつれて影響が小さくなる傾向がある。オフリーク電流の変化は阻止レイアウトの違いやバルクドーピングの違いがはっきりしなかった。これらのことはゲート絶縁膜中の固定電荷の蓄積の影響よりも、チャネル界面の界面準位の生成の方が影響が大きいことを示唆しており、薄いゲート絶縁膜の選択が有効であることがわかった。本研究で集積回路で使われる基本的な素子について、素子サイズや回路レイアウトの違いが半導体照射効果に与える影響を調査し、目標である積算吸収線量10MGy(SiO2)までのトータルドーズ効果(TID)によるトランジスタ特性への影響データを得ることができ、設計段階から放射線耐性をもった集積回路を作る技術の開発を進めるにあたり必要な基礎データを得ることができた。
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