ミュオンは素粒子の一種であり、その平均寿命の測定は素粒子物理学における標準模型の検証に役立つ。寿命測定によって、弱い相互作用の強さを表すフェルミ結合定数が求められる。近年、異なる手法で求められたフェルミ結合定数の不一致やWボソン質量の乖離が報告されており、フェルミ結合定数の新たな精密測定は標準模型の理解を深化させる上で重要な役割を果たす。また、測定対象を負ミュオンに拡大したことで、ミュオンと原子核との反応を介して核物理への展開も可能となった。 さらに、本研究で開発した高性能の粒子検出器はミュオンスピン分光器の高度化にも寄与し、ミュオンスピン緩和法を用いた物質科学研究への波及効果も期待できる。
|