研究実績の概要 |
この宇宙に存在する無数の銀河は大規模構造と呼ばれる疎密構造をなして存在している。この大規模構造にはこの宇宙のエネルギー・物質密度の組成比や膨張速度といった重要な物理的情報が刻まれている。次世代の大規模観測計画 「すばるPFS宇宙論銀河サーベイ」 は、この銀河の大規模構造をいままでにない規模で観測・解析することで宇宙モデルのさらなる理解を得ることを目的として、現在進行中である。本研究課題では、「すばるPFS宇宙論銀河サーベイ」 に向けて、宇宙論的シミュレーションコードを開発し、さらにはそのシミュレーションを用いて観測計画の立案や観測に伴う系統誤差の検証を行うことを目的としている。 今年度はまず、昨年完成した lognormal_lens シミュレーション(Makiya, Kayo and Komatsu 2021, JCAP Volume 2021, March 2021) を用いてPFS宇宙論計画に対して理論予言を与えることで、観測計画の検証や観測提案書の執筆に大きな貢献をした。 またそのほかにも、このシミュレーションを用いて、実際の観測に伴う系統誤差の検証を行なった (Makiya and Sunayama, JCAP Volume 2022, March 2022) 。PFSサーベイでは、個々の銀河に光ファイバーを当てることで分光観測を行うが、そのファイバーの割り当てに際して観測される銀河分布が実際の分布から歪められることが知られている。本論文では、銀河と重力レンズマップの相互相関の測定におけるファイバー割り当ての効果を初めて検証した。結果として、ファイバー割り当てによって相互相関関数が大きく歪められるものの、その効果は個々の銀河の観測される確率を用いて高い精度で補正できることが確かめられた。
|