研究実績の概要 |
本研究課題は、宇宙最初期における銀河内の星形成がダークマターの重力集積のみで決定される現象なのか、あるいは超新星爆発などガスの輻射流体的効果を大きく受けたプロセスなのかを判別することを目的とする。2つのシナリオの切り分けのために、赤方偏移10以上(宇宙年齢5億年以前)での宇宙全体の星形成率密度を調べる。赤方偏移10以上での星形成活動を直接的に調べる観測研究は新型宇宙望遠鏡JWSTの打ち上げに向けて議論が活発になされているが、本研究では赤方偏移6付近の年老いた銀河(passive銀河)の探査を通じて制限をかける独自かつ相補的なアプローチをとる。 2021年度の実施状況について、まず昨年度に提出したJWST宇宙望遠鏡への観測提案が残念ながら不採択となった。そこで、COSMOS天域で行われた自身の先行研究(Mawatari et al. 2020, APJ, 889, 137)と同様のサンプルセレクション解析を同領域の最新のデータセット(COSMOS2020; Weaver et al. 2022, ApJS, 258, 11)に対して適用した。COSMOSチームの研究者とも意見交換しながらカタログ測光データの解析を慎重に行った結果、約10天体の遠方passive銀河候補を見つけた。波長2ミクロン付近の近赤外光データの感度が若干良くなったためサンプルセレクションが改善されたが、それ以外の波長域ではデータの質が自身の先行研究から変わらないため、より詳細なSED解析には進んでいない。海外の共同研究者と議論した結果、JWST宇宙望遠鏡のデータが必須であることを確認し、初期科学運用データが公開され次第その解析に取り組む方針を立てた。JWSTデータ解析に慣れるために、共同研究者として参加している他のJWST観測プログラムにおいて観測準備・データ処理計画などに積極的に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず昨年度に提出したJWST宇宙望遠鏡への観測提案が残念ながら不採択となった。海外の専門家のところへ訪問し議論したが、本計画の遠方passive銀河の確実な発見と詳細なSED解析のためにはJWST観測データが不可欠な要素であるため、全体的な計画の遅れは否めない。 一方で既存のデータのうち最も感度が高い最新の撮像データセット(COSMOS2020; Weaver et al. 2022, ApJS, 258, 11)を解析したが、詳細なSED解析を行い宇宙初期の星形成率密度に強い制限をかけるには感度がいまだに足りていないことがわかったため、サンプルセレクションまでで解析を止めている。
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