研究実績の概要 |
本研究課題は、宇宙最初期における銀河内の星形成がダークマターの重力集積のみで決定される現象なのか、あるいは超新星爆発などガスの輻射流体的効果を大きく受けたプロセスなのかを判別することを目的とする。2つのシナリオの切り分けのために、赤方偏移10以上(宇宙年齢5億年以前)での宇宙全体の星形成率密度を調べる。赤方偏移10以上での星形成活動を直接的に調べる観測研究は新型宇宙望遠鏡JWSTの打ち上げ以降、議論が活発になされているが、本研究では赤方偏移6付近の年老いた銀河(passive銀河)の探査を通じて制限をかける独自かつ相補的なアプローチをとる。 2022年度の実施状況について、まず自身の独自サンプルであるCOSMOS天域のpassive銀河候補(Mawatari et al. 2020, APJ, 889, 137)の分光追観測提案をJWST宇宙望遠鏡第二期公募に提出した。並行して、新たなpassive銀河候補のサンプルを構築することを進めている。2021年度の解析研究からJWST撮像データを中心とした多波長測光カタログが必須であることが判明しているが、2022年度後半にはいくつかのHWST初期観測チームがデータセットを公開し始めた。初期宇宙におけるpassive銀河は非常に稀な天体であるため、十分広い領域のデータが集まるまで待たなければならない。2023年度からの新しいサンプル構築解析に備え、以下の2点の準備研究を2022年度に行った。1) 共同研究者として参加している他のJWST第一期観測プログラムにおいて、実際のデータ処理に中心的に携わり1件の共同執筆論文提出に至った(Hashimoto et al., arXiv:2305.04741)。2) これまでに利用可能なすべてのJWST撮像データを用いて汎用的なJWST測光カタログをする共同研究を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
既存サンプル(Mawatari et al. 2020, APJ, 889, 137)に対するJWST宇宙望遠鏡分光追観測提案は第1期観測提案に不採択となり、第二期以降に応募し続けているため、進捗が遅れている。JWST第一期の撮像観測データが公開され始めたことを受けて、より信頼性が高い新しいpassive銀河候補サンプルを構築することを計画しているが、そちらも十分な広さの撮像観測データが溜まるのを待たないといけないため2022年度中は実際の解析を始められなかった。一方でJWSTデータの取り扱いに習熟するための準備解析を進め、共著論文1本の投稿に至った(Hashimoto et al., 2023, arXiv:2305.04741)。 また精度の高い測光データ解析が本課題の肝であるが、特にそれに関連した研究成果論文を主著書1本(Mawatari et al., 2023, AJ, 165, 208)、共著2本(Yonekura et al., 2022, ApJ, 930,102; Harikane et al., 2022, ApJ, 929, 1)を執筆した。
|