太陽では、フレアと呼ばれる爆発現象や、コロナ質量放出と呼ばれるプラズマ噴出現象が発生する。これらは、太陽表面(光球)から上空のプラズマ大気(コロナ)にかけて伸びる磁場構造が不安定化し、磁気エネルギーが解放されることで発生する。磁気エネルギー蓄積領域にはプロミネンスと呼ばれる低温高密度プラズマ雲が出現することがあり、コロナ磁場の不安定化に伴って噴出する。本研究では、プロミネンスがコロナ磁場の不安定化に及ぼす影響を解明するため、熱伝導と放射冷却を考慮した磁気流体シミュレーションを実施した。特に、熱伝導と放射冷却を考慮することで、プロミネンスの密度・温度を定量的に再現できる。 本年度は、プロミネンスが形成される場合とされない場合、プロミネンスが乱流的な場合と乱流的でない場合をそれぞれシミュレーションで再現し、結果を比較した。 まず、プロミネンスが形成される場合、高密度プラズマにかかる重力を含めて力学平衡を保つため、磁場構造が鉛直方向へ扁平する。プロミネンスの質量が増加するほど、磁場構造が鉛直方向へ伸びるため、磁気流体不安定(トーラス不安定)の臨界条件を満たしやすくなる。本メカニズムは、プロミネンスの重力が磁場の力と同程度の場合に有効となる。磁場強度が比較的弱い静穏領域プロミネンスや極冠プロミネンスの噴出へ適用可能であると考えられる。 次に、プロミネンスが乱流的な場合と、そうでない場合の比較を行った。本シミュレーションでは、Kelvin-Helmholtz不安定(KHI)によって乱流的なプロミネンスが再現された。KHIはコロナ磁場が不安定化した直後に発生した。KHIが進行すると、プロミネンスの質量も増加した。そのため、すでにコロナ磁場が不安定化しているにも関わらず、加速度は小さく、高速のプラズマ噴出へ発展するまでに時間がかかることが分かった。
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