研究課題/領域番号 |
20K14523
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
谷口 琴美 国立天文台, 科学研究部, 特任助教 (40865549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 星間化学 / 星形成 / 電波天文観測 |
研究実績の概要 |
Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)の観測データを用いて、大質量の若い星が周囲の化学組成に及ぼす影響について調べた。観測されたへびつかい座にある2つの原始星は、一つは比較的孤立した環境にあり、もう一方は大質量星の近くにあり、加熱や紫外線の影響を受けている。この2つの原始星周囲の複数の分子の空間分布を比較することで、大質量星からの影響を評価した。この研究より、大質量星からの紫外線の影響で、有機分子であるCH3OHが減少し、炭化水素であるcyclic-C3H2が増加すること、紫外線と加熱の効果により重水素濃縮が進む傾向が見られた。 集団的星形成領域であるNGC2264-Dクラスター領域のALMAのデータを解析し、クランプスケールの化学組成と星形成の関係について調べた。炭素鎖分子であるHC3Nと有機分子のCH3OHの存在量比、HC3N/CH3OH比、が小さいほど星形成活動が小さいことを示し、この存在量比がクランプ内の星形成活動の指標となることを示した。また、この比を用いることで、クラスターの大局的な進化について議論した。 非常に若い電離水素領域を形成したG24.78+0.08 A1天体のALMAの高空間分解能データを解析し、HC3Nの振動励起輝線が、電離水素領域のすぐ外側にある円盤構造をトレースしていることを示した。また、この円盤構造のCH3CN/HC3N存在量比は、中小質量星に付随する円盤より有意に高いことを示し、大質量星周囲の円盤構造におけるニトリル種の化学について初めて議論を行った。 5つの比較的若い段階にある大質量星のALMAのアーカイブデータを用いて、炭素鎖分子と有機分子の空間分布の比較、化学組成の比較を行った。大質量星周囲の炭素鎖分子の化学について、初めて観測的に明らかにする研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測データの解析、化学反応ネットワークシミュレーションに関する研究は計画以上に進展している。 本科研費申請時に予定していた室内実験に関しては、研究代表者が別の研究機関に移動したことにより、継続不可となり、中断している。
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今後の研究の推進方策 |
観測データの解析が終了した、大質量星周囲の化学的多様性に関する内容に関しては、論文を執筆段階であり、2022年度中に投稿する。 化学反応ネットワークシミュレーションに新たに同位体種を組み込み、星形成領域の過去の状況を調べる研究を発展させていきたい。これは、大質量原始星周囲の化学的多様性の起源を探る上で必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた参加学会がオンライン開催になったため、旅費の支出がなくなったことが要因。今年度から、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の観測時間を購入する必要が生じること、対面形式の学会が増えるため、それらに使用する予定である。
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