研究課題
Chandra 衛星アーカイブデータ解析という観点から、前年度着手した、超新星残骸など非分散型カロリメータで初めて高精度分解能が本格的に実現される銀河団以外の天体についての解析を進めた。高エネルギー分解能分光データ解析と相補的になる高角度分解能画像データ解析において、医療画像解析に用いられる free-form image registration という異分野手法を導入することで、従来は難しかった変形する天体の各部分についての時間的な特徴付けを実現し、論文を出版した。XRISM 衛星搭載 Resolve 検出器性能最適化という観点からは、Resolve カロリメータと類似の原理で動作する TES カロリメータを用いた、J-PARC や SPring-8 などの加速器施設での地上実験にも参加し、ソフトウェアの開発などを行うことで、カロリメータ検出器の理解を深めたほか、前年度以前に行なった加速器実験の結果も論文として出版された。Resolve による観測という観点からは、打ち上げ直後の performance verification フェーズにおける初期観測天体の観測戦略の議論や、Modulated X-ray Source によるバックグラウンドの観測への影響の議論などを行なった。また、韓国で行われた国際天文学連合総会において、XRISM 開発の現状、および期待される科学成果などについて招待講演を行なった。さらに、XRISM 観測とシナジーが予想される天体の他装置による観測プロポーザルなどを提出した。
3: やや遅れている
Chandra アーカイブデータ解析の面からは、当初の銀河団という枠を超えた超新星残骸という天体の解析を完成させ、論文化することができたため、当初の目標よりもやや研究が発展していると言える。一方で、Resolve による銀河団観測という観点からは、初期観測ターゲットに関する議論やバックグラウンドの影響の評価などは進んでいる一方で、XRISM 打ち上げは当初の予定より遅れており、本年度行う予定であった Resolve の軌道上性能の最適化は行えていないため、当初の目標よりも研究は遅れている。
XRISM は今年度中に打ち上げ予定である。XRISM における初期観測ターゲットチームの活動を引き続き続け、打ち上げに向け、銀河団プラズマの物理的性質を最も引き出すことができるような観測戦略の詳細を詰める。引き続き Resolve チームに所属し、打ち上げ直後の XRISM データを解析し、銀河団プラズマの物理量に強い制限を加えることを目指す。
XRISM 打ち上げが遅れており、それに関わる旅費や出版費用などが次年度使用額となった。次年度のXRISM運用や論文出版費用などに用いる。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Analytica Chimica Acta
巻: 1240 ページ: 340755~340755
10.1016/j.aca.2022.340755
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 ページ: 311~337
10.1093/pasj/psac110
The Astrophysical Journal
巻: 946 ページ: 87~87
10.3847/1538-4357/acafe0
Journal of Low Temperature Physics
巻: 209 ページ: 971~979
10.1007/s10909-022-02910-w