研究実績の概要 |
本研究課題の究極的な目的は、遠方宇宙にある楕円銀河の祖先となるような銀河を観測し、どのようにして楕円銀河へと進化するのかを解き明かすことである。今年度はアルマ望遠鏡を用いて、赤方偏移6(およそ130億年前の時代に相当)の明るいサブミリ波銀河G09.83808の観測データの解析・論文発表を行なった。G09.83808は手前の大質量銀河による重力レンズ効果を強く受けており、その放射が8-9倍増光して観測できる点が他の類似研究に比べて優位性がある。今回の観測では、アルマ望遠鏡のバンド5の受信機を用いて、新たに一酸化炭素の高励起(J=12-11)輝線放射を7.8σの有意性で検出することに成功した。先行研究で報告されていた相対的に低励起の一酸化炭素輝線放射(J=2-1,5-4,6-5)のデータと組み合わせて、局所熱平衡にない輻射輸送方程式を解くコードであるRADEXを用いて、この銀河に付随した分子ガスの物理的性質を調べたところ、320+170Kと非常に高温であることがわかった。また今回新たに検出した高励起の一酸化炭素輝線の放射領域は有効半径が500pc程度であることがわかった。このような銀河の中心領域に集中した高温ガスは星形成活動に伴う紫外線放射だけで温められたとは考えにくく、活動銀河核からのX線放射や衝撃波などの他の加熱源の存在を示唆する。
この研究成果についてはTsujita, Tadaki et al. 2023, PASJ, 74, 1429として論文を発表することができた。
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