巨大銀河の中心には、普遍的に超巨大ブラックホールが存在すると考えられている。それらブラックホールのうち、特に質量降着している系は光り輝いており、活動銀河核と呼ばれる。そしてこれまでの研究から、活動銀河核は母銀河の性質に影響を及ぼすことが示唆されている。そこで我々はX線とミリ・サブミリ波の観測によってその影響について研究を行った。X線を用いることで、活動銀河核からの放射がどのような空間領域に影響を及ぼしているかが推測できる。一方で、ミリ・サブミリ波帯域にある分子輝線の観測からその領域での星間物質、または星形成の源がどのような影響を受けているのかを調査できる。研究対象となるサンプル選択には、硬X線サーベイ装置Swift/BATによる活動銀河核カタログを用いた。透過力の高い硬X線選択により、可視光観測などでは、活動銀河核周辺のガスに隠されて見落とされてしまうような活動銀河核であっても、選択が可能である。この無バイアスな活動銀河核サンプルについて、高空間分解能を達成できる X 線観測衛星 Chandra とミリ波・サブミリ波干渉計 ALMA を用いて研究を行った。結果、活動銀河核からの X 線放射によって星間物質の性質が変化し、星形成を抑制する可能性がわかってきた。以上の結果は、初年度また次年度にて、欧文雑誌にて 2 編の論文として出版受理された。またこの活動銀河核からの影響の研究に加えて、X 線とサブミリ・ミリ波の同様のデータから、ブラックホール近傍からの X 線とミリ波の連続波の光度の間には強い相関関係があることも明らかにした。これは、ブラックホール近傍のX線放射領域をあらたにミリ波でも研究できる可能性を示唆するだけでなく、X線よりも透過力の高いミリ波での新たな活動銀河核サーベイの有用性を示唆する重要な結果である。この結果は、最終年度にて欧文雑誌で出版受理されている。
|