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2021 年度 実施状況報告書

宇宙論的シミュレーションとGaiaで迫る銀河系形成

研究課題

研究課題/領域番号 20K14532
研究機関東北大学

研究代表者

平居 悠  東北大学, 理学研究科, JSPS特別研究員(CPD) (60824232)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード天の川銀河 / 矮小銀河 / 銀河形成 / 元素組成 / rプロセス / 化学動力学進化 / 金属欠乏星 / 数値シミュレーション
研究実績の概要

鉄より重い元素合成過程の一つであるrプロセスで合成される元素 (rプロセス元素)に富んだ星の形成環境についての研究を実施した。天の川銀河の構成要素となった矮小銀河まで分解できる高分解能な宇宙論的天の川銀河形成シミュレーションを行い、形成されたrプロセス元素に富んだ星がいつ、どこで形成されたのかを解析した。その結果、位置天文衛星Gaia観測と同様に、rプロセス元素に富んだ星の多くが天の川銀河の円盤と異なる軌道を有しており、天の川銀河の恒星ハローに属する星であることが示された。これらの星の90%以上が、宇宙が誕生してから40億年以内に誕生している。rプロセス元素に富んだ星が生まれた場所を解析すると、鉄の量が太陽の100分の1以下の星でrプロセス元素に富んだ星の90%以上が天の川銀河の構成要素となった矮小銀河で形成されたことが明らかになった。宇宙初期の星質量が太陽の10万倍程度の矮小銀河では、1回のrプロセス元素合成イベントでも銀河全体がrプロセス元素に富む。このような環境で星形成が起これば、金属量の低いrプロセス元素に富んだ星が誕生する。一方、rプロセス元素に富んだ星の一部は天の川銀河円盤で形成された。こうした星は、rプロセス元素合成イベントによって一時的にrプロセス元素量が高まったガスから誕生する。これらの結果は、rプロセス元素に富んだ星の化学動力学的性質を観測することにより、宇宙初期の天の川銀河形成環境を明らかにできる可能性があることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は当初予定していたrプロセス元素に着目した天の川銀河形成の研究に取り組むことができた。宇宙論的な天の川銀河形成シミュレーションを実施し、rプロセス元素に富んだ星の形成環境について研究を実施した。これにより、rプロセス元素に富んだ星の多くは、現在天の川銀河周囲に見られる矮小銀河に近い質量の銀河で形成されたことを示した。さらに、rプロセス元素に富んだ星の動力学的性質を解析し、同じ矮小銀河で誕生したrプロセス元素に富んだ星は似た動力学的性質を持つことを明らかにした。これにより、本研究の目的である、「天の川銀河の構成要素と現在存在する矮小銀河の関係を明らかにする。」及び、「金属欠乏星のrプロセス元素組成・動力学的性質と天の川銀河の形成進化史を対応させる。」の2点を達成することができた。一方、天の川銀河円盤についての研究は未だ不十分であるため、今後の課題としたい。以上から本研究はおおむね順調に進捗していると評価できる。

今後の研究の推進方策

天の川銀河サイズのハローについてより高分解能な宇宙論的ズームインシミュレーションを実施する。まず、実施済みのN体のみの構造形成シミュレーションから天の川銀河サイズのハローを切り出す。2022年度は、2021年度までに実施済みの計算 (粒子数1億体)と同様のハローについてより高分解能 (粒子数10億体)な3つの異なる初期条件についての計算を実施する。続いて、切り出した初期条件を用いて重力・流体計算を行う。計算は、赤方偏移100から3まで実施する。このシミュレーションは、宇宙初期に多く存在したと考えられている太陽の10万倍程度の質量を持つ矮小銀河まで分解できる。
計算後は、シミュレーションで形成される中心銀河の構成要素となった銀河の星形成史、元素組成、形成環境を解析する。まず、2021年度に実施済みの粒子数1億体のモデルで赤方偏移0のハローについてハロー合体史の解析を行う。この結果に基づき、赤方偏移3で天の川銀河の構成要素となったハローを同定する。低分解能なシミュレーションで分解できていないハローについては、赤方偏移3で形成中の中心銀河の合体史から、構成要素となったハローを同定し、同様の解析を行う。これらのハローで形成した銀河の星形成史、元素組成を解析する。さらに、これらのハローを高赤方偏移まで追跡し、構成要素となった銀河の形成位置、周囲のガスの元素組成を明らかにする。以上の解析を、2021年度に実施した1モデルと本年度に実施する3モデルの合わせて4モデルについて行う。さらに、これらのデータを位置天文衛星Gaiaとすばる望遠鏡高分散分光器で得られた高分散分光観測データと比較し、銀河系の初期進化史を明らかにする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] University of Groningen(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      University of Groningen
  • [国際共同研究] Institut Astrophysique de Paris(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Institut Astrophysique de Paris
  • [国際共同研究] Albert Einstein Institute(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Albert Einstein Institute
  • [雑誌論文] Predicting the Expansion of Supernova Shells for High-Resolution Galaxy Simulations Using Deep Learning2022

    • 著者名/発表者名
      Hirashima K.、Moriwaki K.、Fujii M. S.、Hirai Y.、Saitoh T.、Makino J.
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 2207 ページ: 012050~012050

    • DOI

      10.1088/1742-6596/2207/1/012050

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] SIRIUS project. I. Star formation models for star-by-star simulations of star clusters and galaxy formation2021

    • 著者名/発表者名
      Hirai Yutaka、Fujii Michiko S、Saitoh Takayuki R
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 73 ページ: 1036~1056

    • DOI

      10.1093/pasj/psab038

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] SIRIUS project. II. A new tree-direct hybrid code for smoothed particle hydrodynamics N-body simulations of star clusters2021

    • 著者名/発表者名
      Fujii Michiko S、Saitoh Takayuki R、Wang Long、Hirai Yutaka
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 73 ページ: 1057~1073

    • DOI

      10.1093/pasj/psab037

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] SIRIUS project. III. Star-by-star simulations of star cluster formation using a direct N-body integrator with stellar feedback2021

    • 著者名/発表者名
      Fujii Michiko S、Saitoh Takayuki R、Hirai Yutaka、Wang Long
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 73 ページ: 1074~1099

    • DOI

      10.1093/pasj/psab061

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] R-process enhancements of Gaia-Enceladus in GALAH DR32021

    • 著者名/発表者名
      Matsuno T.、Hirai Y.、Tarumi Y.、Hotokezaka K.、Tanaka M.、Helmi A.
    • 雑誌名

      Astronomy & Astrophysics

      巻: 650 ページ: A110

    • DOI

      10.1051/0004-6361/202040227

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Neutron star mergers as the astrophysical site of the r-process in the Milky Way and its satellite galaxies2021

    • 著者名/発表者名
      Wanajo Shinya、Hirai Yutaka、Prantzos Nikos
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 505 ページ: 5862~5883

    • DOI

      10.1093/mnras/stab1655

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Simulations Resolving Individual Stars (SIRIUS) project2022

    • 著者名/発表者名
      平居悠
    • 学会等名
      令和2年度国立天文台CfCAユーザーズミーティング
  • [学会発表] Chemodynamical evolution of dwarf galaxies based on cosmological zoom-in simulations: Perspective for PFS survey2022

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Hirai
    • 学会等名
      Subaru PFS 13th collaboration meeting
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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