本研究では原始惑星系円盤のリング構造に着目し、その形成とそこでのダストの成長について調べた。 これまでの研究によって、原始惑星系円盤ではリングのような構造を形成し、そこでダストのサイズ成長が起こり惑星形成へと進むと考えられている。特に我々はダストが付着成長することに伴いリングを形成し、その内側では惑星形成が進んでいる可能性を指摘した(Ohashi et al. 2021)。この成果によって、ダスト成長の開始時期が従来考えられていたような原始惑星系円盤の段階(年齢~ 1Myr程度)よりも一桁以上早く、原始星段階(年齢 ~ 0.1 Myr)から開始している可能性を示した。またリング形成のタイムスケールも見積もることに成功している。 これらの結果を踏まえて、原始星段階の若い円盤に着目しALMA望遠鏡やVLAといったミリ波の電波干渉計による観測を実施、ダスト成長の様子を調べた。 その結果、L1489原始星を取り巻く円板では確かに、100 auよりも外側ではダスト成長していないことが明らかになった。さらに50 au付近にリング構造を発見し、この位置はダスト成長によるリング形成と一致することも明らかになった。これらの結果は、ダストの付着成長によるリング形成シナリオを支持する結果となった。 また、L1527原始星を取り巻く円盤でも同様に外側50 auではダスト成長していないことがわかった。さらに、この円盤では、20 au付近にダスト塊を発見、その外側で温度が急激に下がっていることがわかった。これらの結果の解釈として、円盤が重力的に不安定でダスト塊を形成、その外側は日陰となり低温領域が形成されることを提案した。 このように原始星円盤で惑星形成の開始を示唆する様子だけでなく、非常に動的な進化の様子を明らかにすることができた。
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