研究課題/領域番号 |
20K14535
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
深井 稜汰 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (10848469)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 元素合成 / 隕石 |
研究実績の概要 |
太陽系の物質を構成する元素の起源を明らかにすることは、惑星や生命の起源・進化に直結する普遍的かつ最重要なテーマである。太陽系に存在するほとんど全ての元素は、太陽系が誕生する以前の宇宙環境で合成されている。中でも鉄より質量数の大きい重元素は、中性子捕獲反応という元素合成過程でできたことがわかっている。しかし、太陽系への輸送過程については不明な点が多い。本研究では、隕石に含まれる「プレソーラー粒子」の分析を通して、太陽系の重元素の起源を明らかにすることを目的とする。
当該年度では、理論的側面・実験的側面の両者から、段階的目標を達成した。はじめに、プレソーラー粒子が初期太陽系に輸送された時、原始惑星系円盤にどのような同位体不均質性を与えるか、シミュレーションによって解を求めた。結果として、サイズの小さいプレソーラー粒子が注入された時ほど、太陽系の同位体不均質性が維持されやすいことが明らかになった。本研究から、太陽系の重元素を輸送した粒子の条件を制約することが出来た。本研究の成果は、国際誌The Astrophysical Journalから出版された(Fukai and Arakawa, 2021)。
一方で、プレソーラー粒子の元素存在度測定のために、10種類ほどの標準試料を購入し、調整・秤量・質量分析計における感度の確認を行なった。この準備によって、硫黄以降の質量数のほとんどの元素(希ガス・ハロゲンを除く)が測定可能になった。更に、試験的に抽出したプレソーラー粒子に対して、顕微鏡観察等の基礎実験を行い、その過程を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルスによる影響で、大学で実施する実験に十分な時間を割くことが出来なかった。そのため、実験的準備に関してはやや遅れている。一方で、理論的研究に十分な時間を割くことが出来たため、当初予定していたよりも早く論文出版に至った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルスによる影響は大きいと予想される。大学への出張回数が減少すると予測されるため、実験計画を綿密に行い、短時間で効率的にデータが得られるよう工夫する。
具体的な実験として、隕石試料の破砕・酸分解・プレソーラー粒子の抽出に加え、顕微鏡観察等の非破壊分析を行う。特に顕微鏡観察の結果について、論文成果の発表を目指し研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は少額のため、翌年度分の計画に影響を与えない。
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