研究課題/領域番号 |
20K14540
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
安藤 紘基 京都産業大学, 理学部, 助教 (00706335)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | あかつき / 電波掩蔽観測 / 熱潮汐波 / スーパーローテーション |
研究実績の概要 |
金星では自転の60倍の速度で大気が運動するスーパーローテーションという現象が生じている。その生成・維持メカニズムとして、熱潮汐波に伴う鉛直方向の角運動量輸送が有力視されているが、それの鉛直構造(位相・振幅)は観測的に明らかになっていない。本研究では、あかつき電波掩蔽観測によって、金星低緯度における熱潮汐波の鉛直構造を抽出することを目的としている。 現在、データ数が順調に増えてきて、熱潮汐波の構造が次第に現れつつある。高度50-55kmを中心として鉛直伝播の方向が切り替わる様子が見えてきた。高度55kmより下ではケルビン波などの短周期擾乱の影響がまだ残っているため、もう少しデータ数を増やして他の擾乱を除外できれば、熱潮汐波の構造がより明確にできると考えている。一方で、金星大気大循環モデルAFES-Venusを用いて、大気安定度や太陽加熱率分布に対する熱潮汐波構造の依存性を調べている。その結果、AFES-Venusで見られる熱潮汐波の位相・振幅が電波掩蔽観測と非常に良く整合していることを見出した。特に高度60kmより上では殆ど違いがない。高度60kmより下では、位相にズレがあるものの振幅の分布は定性的に整合する。この結果については、現在論文を準備中である。 これとは別に、金星雲物理過程をAFES-Venusに組み込んだ研究も進めており、あかつき赤外観測で見られるような周期5.5日で周回する東西波数1の構造を再現できた。この成果についてはすでに論文を投稿している。将来的には、この雲モデルに化学過程を入れるなど改良を施して、より現実的な金星雲モデルを構築したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ数の増加と共に、熱潮汐波の鉛直構造が次第に明らかになりつつある。特に、金星熱潮汐波の特徴である高度50-55kmを中心とした鉛直伝播方向の切り替わりが明確に見えてきたのは大きな進歩である。高度55kmより下での他の短周期擾乱の影響を除外できれば、熱潮汐波の構造がより明確にできると期待する。また、金星大気大循環モデルAFES-Venusを用いた理論的研究も進んでおり、電波掩蔽観測と良く整合する。観測と理論の両面で順調に研究が進んでいるので、この調子を維持していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
あかつきの運用延長が正式に決まったので、引き続き電波掩蔽観測が実施される。データ数もコンスタントに増えるので、それを随時解析して熱潮汐波の鉛直構造の抽出に努めたい。尚、あかつき電波掩蔽観測は、基本的に長野県にある臼田宇宙空間観測所にて実施されるが、インドやドイツのアンテナも使用して実施されている。昨年度末にこれらのデータを解析するためのプログラムを作成したので、未解析のデータを素早く処理することでデータ数を増やして、熱潮汐波を抽出するための材料にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内や海外での学会発表や研究打ち合わせを予定していたが、基本的にオンラインで実施されたので旅費が全く掛からなかった。次年度も学会は基本的にオンラインで実施されることが濃厚であるため、残額は高速計算機の購入費用に充てる予定である。
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