研究課題
原始太陽系円盤内での物質輸送を理解するため、46億年前に原始太陽系円盤で形成した微惑星残存物である彗星をプローブとして下記を実施した。まず各種分子種の元素同位体比及び氷の主成分であるH2O, CO2, COの化学組成比から彗星の形成温度を推定した。化学組成比の推定はコマ中の酸素禁制線を用いた。従来の推定手法では、酸素禁制線の線幅を説明できないことやCO分子の寄与を無視する等の問題があった。そこでDSMC法を用いて各種分子・原子について彗星核からの昇華、コマ中での光解離反応や衝突などを考慮して、運動をシミュレートする彗星コマの物理モデルを開発した。このモデルを21P彗星に適用した結果、上記の問題の解決に加えて、同彗星のCO2の存在量比が彗星の平均的な範囲と比べて優位に小さいことを示した。次に形成距離やダストの性質に関して、21P彗星の熱輻射スペクトルから鉱物の組成比、結晶質/非晶質比、サイズ分布を決定し、同彗星が他の彗星と比べて平均的な太陽距離で形成されたことを示した。また、同彗星の偏光撮像画像から、コマ中でダストの崩壊は生じているが、偏光度が優位に変わるほどのダスト特性(組成、空隙率、サイズ分布)が変化していないことを示した。上記の結果や先行研究の知見を組み合わせ、21P彗星は典型的な距離でありながら他の場所より暖かい場所で形成されたことを示した。今後は統計的な議論をするためサンプルを増やしていく。この他に、本課題で開発した彗星コマの物理モデルをC/2014 Q2彗星のコマの空間分布に適用し、これまで彗星核から直接放出されると考えられていたNH3が別の分子等から二次的に生成されていること、元となる分子は太陽紫外線による光解離に対して500秒程度の寿命を持つことを明らかにした。具体的な分子は明らかにできていないが、本結果は今後の実験室での起源物質調査への基礎情報となる。
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https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20231121_859_comet.html
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