研究実績の概要 |
本年度は主に,新たな隕石試料の薄片作成、それらの走査型電子顕微鏡による観察や、集束イオンビームによる試料加工と透過型電子顕微鏡による微細組織の観察を進め,希ガスのデータの解析方法の見直しを行った。隕石試料の観察では,衝撃変成を受けた隕石の衝撃溶融脈から離れた領域における衝撃変成組織に着目した。観察した隕石においては,衝撃溶融脈から離れている領域ではやはり温度の効果は小さく,衝撃変成組織は主に衝撃圧力のみにより形成されていることが明らかとなった。一方,一度しか衝撃を受けていないと考えられる火星隕石のクロマイトを観察したところ,衝撃溶融脈から離れた箇所でも相転移が起きていることが確認された。クロマイトは高圧下では温度によって2種類の相が存在する(chenmingite, xieite)ため,この相の同定をすることで温度の条件について制約を与えることができると考え,現在解析を進めている。 希ガスのデータ解析では,従来のリダクションの計算式をすべて見直し,数カ所の計算ミスを修正し,誤差の伝播を二重に行っている箇所がいくつか発見されたため,それらも修正した。ヨウ素ーキセノン年代の計算において,一部の箇所で絶対量になおして計算を行っている場所があったが,それらを比の値のみで計算できるようにし,僅かな差ではあるがより正しい誤差が計算できるようになった。計算方法を見直したことにより,これまで取得したすべてのデータの再計算を進めており,今後それらをまとめて論文を作成する予定である。
|