研究課題/領域番号 |
20K14544
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
高橋 透 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (40759833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電離圏擾乱 / VHFシンチレーション / マルチスケール観測 / スピッツベルゲン島 / オーロラ / GNSS |
研究実績の概要 |
本研究では100-1000 mスケールの電離圏擾乱を観測するVHFシンチレーション受信機を開発し、GNSSシンチレーション受信機及び短波レーダーとの同時観測を行うことで電離圏擾乱のマルチスケール観測を実施する。これにより電離圏擾乱の生成メカニズムを明らかにすることを目的としている。 2020年度はノルウェー・オスロ大学に滞在し、VHFシンチレーション受信機の開発を行なった。人工衛星から放送される電波強度を見積もり、必要なアンプ、フィルタ、アンテナの選定を行い、購入した。プロトタイプの受信機を使って、調布にて受信実験を行なった。また、観測プログラムの開発も平行して行い、観測、データ保存、解析までを自動で行えるプログラムの開発を進めている。 本年度中にスピッツベルゲン島ロングイヤビンに受信機を設置する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、設置が難しくなったため、2020年度はロングイヤビンに観測所を所有するスバールバル大学の研究者と設置について議論を行なった。 また、観測対象である電離圏擾乱のスケールの違いによる生成・成長メカニズムを明らかにするために事前調査として、オスロ大学が2019年に実施したロケット実験によって観測された電離圏擾乱の解析を行なった。この解析では、電離圏擾乱は630.0 nmのオーロラを作り出す荷電粒子の降り込みによって生成されると同時に、557.7 nmのオーロラを作り出す荷電粒子の中性大気の電離によって電離圏擾乱が減衰することを示した。この研究から、電離圏擾乱のマルチスケール観測においても、高感度カメラや大型大気レーダーによって3次元的な観測を同時に行う必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は日本で必要な開発を行い、完成された受信機をノルウェー領スピッツベルゲン島に設置する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、ノルウェーと日本間の渡航が難しくなったことから、開発自体を行うことができなくなった。そこで、2020年度はVHFシンチレーション受信機の開発素案の作成と、帰国後速やかに開発が再開できるように物品の購入までに留め、装置を開発後に現地への設置が速やかに行えるようにスピッツベルゲン等の観測所を運営しているスバールバル大学との交渉を行い、設置許可に関する交渉を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
VHFシンチレーション受信機は最終的には低緯度から高緯度に設置し、全地球的に電離圏擾乱の発生メカニズムを明らかにする予定である。高緯度のみは海外観測所に設置しなければならず、数年は設置の目処が立たない。そこで、まずは電子航法研究所が位置する調布にて実証実験を行い、2021年度後半を目処に地磁気緯度が低緯度に位置する石垣島に設置する。その後、中緯度に位置する陸別に設置したのちに、スピッツベルゲン島に設置する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、海外渡航が大きく制限されたことから、海外渡航を次年度以降に延期した。
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