研究課題/領域番号 |
20K14545
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
嶌生 有理 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究開発員 (60710548)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 衝突物理 / 熱物性 / 小惑星 / 粉体 / 衝突実験 / 熱赤外カメラ |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き異動後の研究時間が十分確保できなかったため、衝突実験および予備実験は実施せず、既存の実験データの整理と解析および惑星探査データ解析への応用検討を行った。これまでに様々な粉体層への超高速度衝突実験を行い、衝突クレータの熱撮像および弾丸アスペクト比が粉体上に形成されるクレータ形状に与える影響を調べてきた。その結果、粉体の安息角に依存して、弾丸アスペクト比が3以上の場合は直径/深さ比もしくは長軸/短軸非(弾丸姿勢に依存する)が約10%程度変化しうることがわかった。本結果は、別途実施した衝突数値計算の結果と整合的であった。また、クレータ形成直後の熱撮像から、標的バルク密度が大きいほど衝突生成物は表面付近に分布し、表面温度の上昇が早いことがわかった。本結果は、C型小惑星や彗星のような多孔質の表層を持つ天体表面での衝突による熱物性進化を考える上で重要である。今後は、本成果をはやぶさ2小型衝突装置が形成した副クレータの形状解析結果に応用する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、既存のデータ解析と整理を実施した。しかし、コロナ禍で当初計画していた衝突実験が実施できなかったことに加え、異動後の業務で十分な研究時間を確保することができなかった。このため、昨年予定していた予備物性計測実験と論文執筆ができず、論文投稿まで至らなかった。以上から、当初計画からは遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、追加の衝突実験は実施せず、クレータ形状の解析と衝突後温度変化から衝突による熱物性変化の解析を進める。クレータ形状抽出ツールを整備して形状の統計情報を抽出するとともに、衝突生成物の温度履歴から熱物性の推定を行う。必要があれば、物性測定の予備実験を行う。また、本課題とは別途実施している惑星探査データ解析(はやぶさ2小型衝突装置SCIによる副クレータ形成)と本研究成果を統合し、衝突による小天体表層の熱物性変化に関する論文を投稿する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
異動後の業務のため、予定していた実験の実施および国内外の学会への参加ができなかった。次年度使用額は、予備実験の消耗品の購入、学会旅費、論文校正費用として使用する計画である。
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