研究課題/領域番号 |
20K14548
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
林 佑 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846842)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地球外物質 / 透過型電子顕微鏡 / X線分光分析 / 極低温検出器 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に従って有効面積を大幅に向上可能なマッシュルーム型吸収体超伝導遷移端型(TES)X線マイクロカロリメータのデザインとマッシュルーム型吸収体の製作プロセスの最適化を行った。マッシュルーム型吸収体は、従来デットスペースとなっていた読み出し配線や素子間を覆うような3次元的な構造をしており、従来のTESカロリメータの吸収体に対して約10倍有効面積を向上可能な吸収体である。先行して進めていたマッシュルーム型吸収体の材質となる金の安定した電析による成膜環境を用いて、マッシュルーム型吸収体を模擬した形状の成膜試験を行い、安定した成膜を可能とする電流密度や成膜時間といった電析の条件だしを行った。これにより、電流密度と成膜時間を調整することで、マッシュルーム型吸収体に最適な厚みの金の成膜を可能とした。 また、並行して行っていた新しく設計したエネルギーの広帯域化を可能とする2種類の異なる厚みの吸収体を持つTESカロリメータを走査透過型電子顕微鏡へ搭載し、分析した結果から新しく設計した素子がエネルギーの広帯域化に対して有効であることの実証実験を行い確認した。これは低エネルギーのX線がTESカロリメータのチップ上で外側まで広がるエネルギー依存性を考慮した設計となっており、検出効率を最大2倍程度向上可能とする。 これらの結果を設計へフィードバックし、新しい地球外物質分析用TESカロリメータのための、広帯域化と大有効面積化を組み合わせた240素子の大規模TESカロリメータアレイの設計を行い、製作準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電析を用いて安定した金の成膜に成功し、電流密度と析出時間から厚みの制御を可能とした。それぞれ条件を変え成膜した金に対して、走査電子顕微鏡を用いた表面分析を行い、従来の蒸着法に比べ、粒径の小さい膜の成膜可能とした。一方で、TESカロリメータの吸収体の重要なパラメータである低温での熱伝導率の測定では、測定のための4K冷凍機の故障とBCP等が重なり評価が出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り設計した240素子の大規模アレイの製作を進めていく。それに伴い、大規模アレイに必須な技術であるTESの読み出し配線の3次元化に向けた開発を進めていく。それと並行し、電析法で成膜した金の低温での熱伝導率の評価を行いながら熱伝導率のより良い金の成膜を可能とする条件だしをさらに行っていく。
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