研究課題/領域番号 |
20K14549
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
菅原 春菜 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特任助教 (50735909)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機硫黄化合物 / 硫黄 / 硫黄同位体比 / 有機分子進化 / 星間分子雲 / 原始太陽系円盤 |
研究実績の概要 |
有機分子の主要な構成元素は、水素(H)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)の 4元素であるが、硫黄(S)はリン(P)と共に重要な生体必須微量元素の1つである。また、硫黄は-2から+6までの幅広い酸化数を持ち、反応性も高く、金属元素や有機分子と反応して様々な化合物を生成するため、酸化還元環境に敏感なトレーサーでもある。近年の研究から、隕石中に硫黄が無機化合物としてだけでなく、有機硫黄化合物としても存在することがわかってきており、また、NASAの火星探査機キュリオシティーによる火星土壌のその場分析からもチオフェンのような硫黄を含む環状の有機分子が見つかっており、有機硫黄化合物の存在は注目を集めている。しかし、地球外物質に含まれる有機硫黄化合物の研究例は少なく、その多様性や生成プロセスについてはまだあまり理解が進んでいない。 本研究では、星間分子雲から原始太陽系円盤に至るまでの過程において、どのような有機硫黄化合物が生成し、そこで硫黄に同位体分別(34S/32S比)が生じるのか否かを明らかにするため、無機硫黄化合物を出発物質として、これらの環境を模擬して有機物を生成する実験を行い、生成物の有機化学組成や硫黄同位体比の分析を行う。 本年度では、まず、研究協力者と元素分析-同位体比質量分析計 (EA/IRMS) を用いたバルクレベルでの硫黄同位体比(34S/32S比)の分析法開発を進め、微小量での分析法の検証を行なった。また、模擬実験の方法についての具体的な検討を進め、必要な試薬や物品類の調達を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では他機関の分析装置や実験装置を利用する必要があるが、本年度はコロナ禍による出勤抑制や移動規制等により、予定していた研究計画のうち、実験室での作業および他機関への出張を要する作業の多くについて実施が困難となった。そのため、本年度は具体的な実験に基づく部分の進展が限定的なものとなり、予定より進捗が遅れている状況となった。 一方、オンラインでの打ち合わせ等を積極的に活用し研究協力者との意見交換、具体的な実験方法や得られる結果の可能性についての議論を深める時間を持つことができた。よって、来年度に十分な進捗を得るための準備体制を整えることに注力し、基礎知見についても十分な下地を得るよう務めた。 以上から、今後、実際に実験の作業を開始し継続することが出来れば、進捗の遅れをある程度まで取り戻すことは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、有機硫黄化合物の有機化学分析方法の開発を行うと共に、星間環境や原始太陽系円盤を模擬した有機物生成実験を行う。 万一、コロナ禍の社会状況により、他機関での実験の実施が困難な場合は、所属機関で実施可能な実験方法への変更や天然試料の分析等、代替手法を検討する。
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