研究課題/領域番号 |
20K14551
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日比谷 由紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30867536)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 難揮発性包有物 / カラムクロマトグラフィー / 質量分析 |
研究実績の概要 |
本研究は「太陽系誕生時における 92Nb(ニオブ-92)存在度分布の解明」を目的とする。具体的には、1 外側太陽系由来である炭素質コンドライトのうち始原的な CV, CR タイプの隕石からCAIを物理的に抽出し、2 研究代表者が開発した高精度クロム-チタン安定同位体測定法と 3 高精度ジルコニウム同位体比分析を組み合わせることにより、CAIがもつ太陽系内の位置情報と92Nb初期存在度の同時決定を試みる。既存値との比較を通して、太陽系の大質量星起源物質の初期分布の探索を行い、太陽系形成時の星間環境・物質循環に関する考察を行う。令和3年度には、テスト段階の測定として、未分類である始原的エコンドライト隕石の元素分離、およびクロム-チタン安定同位体測定、およびジルコニウム同位体比分析を行い、この隕石の太陽系内の位置情報とジルコニウム初期存在度を得た。また、はやぶさ2の初期分析チームの一員として協力し、MC-ICPMSにおけるチタン同位体比分析に必要な試料を従来の3倍以上も低濃度にすることに成功した。これは、今後、CAIのチタン同位体比分析を進めていく上で重要な足掛かりとなった。また、新型コロナウイルスの影響で遅延していた隕石サンプルである炭素質コンドライトの試料の入手も完了し、厚片作成を終えて、CAIの探索作業を開始した。試料の固定には当初エポキシ樹脂を使用予定であったが、抽出の際に岩片単体として扱うことができるアセトンで溶解可能なクリスタルボンドを用いることにした。クリスタルボンドはブランク測定のために溶かした後、試料抽出に影響のない程度の元素濃度であることをICP-MSにて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、テスト測定として、地球物質の標準試料の粉末を混合することでCAIの組成を模擬的に作製し、回収率の評価を行った。東京大学のクリーンルームにおいて、化学分離作業を行い、MC-ICPMSを用いたクロム-チタン-ジルコニウム分析を行って、初期太陽系核種均質分布に関する新たな発見をすることができただけではなく、MC-ICPMSにおけるチタン同位体比分析試料の低濃度化にも成功した。また、隕石サンプルの入手も完了し、厚片作成を終えて、CAIの探索作業を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、比較的大きな CAI が見込まれるCV, CR 炭素質コンドライト隕石を試料として用い、試料(0.5ー1g)は、アセトンで除去することが可能なクリスタルボンドに固定後、樹脂部とともに輪切りにし、鏡面研磨・炭素蒸着を施した後、電子顕微鏡を用いてCAIの探索を行う。Cr-Ti-Zr 同位体比分析に必要な元素濃度を見込める CAI を発見した後、マイクロミルにより CAI の抽出を行い、元素分離を行う。その後、同位体比分析を行い結果について解釈を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、他機関で行っている分析作業が少なかったために、旅費に余剰金が発生した。次年度は、当初の予定よりも他機関における質量分析の回数を増やし、翌年度分として請求した助成金と合わせて旅費に計上することで、CAIの同位体比分析結果を増やす予定である。
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