研究課題/領域番号 |
20K14553
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
栃本 英伍 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 特別研究員 (40749917)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スプリット前線 / 温暖前線 / 寒冷前線 / 温帯低気圧 / 大雨 |
研究実績の概要 |
対流研中層から上層では、スプリット前線と呼ばれる、地上の前線に先行し且つ地上前線から分離している湿度の水平勾配で特徴づけられる前線が現れることがある。これまで、このスプリット前線の実態は十分に理解されていなかった。本研究では、長期客観解析(気象庁55年再解析)データを用いてスプリット前線を客観的に抽出し、その統計的特徴を明らかにした。スプリット前線は、秋季と春季に多く、日本付近では秋季に出現頻度が高いことがわかった。また、温帯低気圧を客観的に抽出したデータを用いて、スプリット前線と温帯低気圧の関係を調べた。スプリット前線は、温帯低気圧中心の東側もしくは南東側で出現頻度が高いことがわかった。さらに、顕著なスプリット前線を伴う低気圧と伴わない低気圧の構造および環境場の特徴を比較した。顕著なスプリット前線を伴う低気圧では、大気上層のトラフ(低気圧)が強く、より南まで侵入する傾向があり、その結果顕著なスプリット前線が形成されることが示唆された。 また、2013年4月に関東、東海地域で発生したスプリット前線を伴う大雨事例を数値シミュレーションを用いて解析した。本事例においては、雨の時間発展に関連して下層の前線構造変化が見られた。また、この下層の前線構造変化に際し、スプリット前線との相互作用が示唆された。また、この事例においては、東海ー関東沖の海面水温が例年と比較して非常に高かった。数値シミュレーションを用いた感度実験により、この高い海面水温が大雨に影響していたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り、スプリット前線の客観的抽出に概ね成功し、その統計的特徴を明らかにすることが出来た。また、顕著なスプリット前線の特徴を明らかにした。本成果は2022年気象学会春季大会で口頭発表を行った。これらのことから、本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、顕著なスプリット前線が生じるメカニズムをより詳細に明らかにするために、数値シミュレーションを用いた解析を行なっていく予定である。これまでコンポジット(合成平均)解析を用いて明らかにしたスプリット前線の環境場を基に数値シミュレーションを行い、スプリット前線が形成するメカニズムを明らかにする。 また、スプリット前線と大雨の関係を調べるために、大雨を伴うスプリット前線と伴わないスプリット前線の比較を行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、国内、国外出張が制限されたため。 今後は、投稿論文掲載費やストレージの増強、国内外の出張で使用する予定である。
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