研究課題/領域番号 |
20K14555
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
眞塩 麻彩実 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50789485)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロジウム / キレート樹脂 |
研究実績の概要 |
工業的に幅広い分野で使用されている白金族元素は、大気中における人為的影響が指摘されており、その影響は全球的に広がっている。白金(Pt)やパラジウム(Pd)に関しては、水圏環境における分布や挙動が報告され人為的影響の詳細も解明されつつあるが、ロジウム(Rh)に関しては、未だに環境中での分析方法すら確立されていない。濃度がfmol~pmolレベルと極微量にしか存在していないことや、存在形態が複雑なために分析が困難だからである。そこで本研究では、環境中のRhを分析するために、室内にもフィールドにも対応したクリーン技術を駆使した実験環境のもと、高感度高精度なRh分析法を確立することを目的とした。 Rhは同位体元素がないため、前濃縮で100%の回収率を必要とする検量線法を適用しなければ定量が行えない。そのため昨年度は前濃縮手順として、Rh吸着材として市販されているCRB-05などのキレート樹脂に100%吸着する条件の検討を行った。海水のような塩が豊富に含まれている環境水では、Rh吸着率は非常に低く、塩化スズを添加することで吸着率の上昇が見られたが、吸着率100%には到底及ばなかった。一方、塩が一切含まれていない溶液であれば、樹脂と試料溶液を長時間浸透させるバッチ式実験で100%の吸着率が得られた。実際に環境水試料を分析する際は樹脂をカラムに詰めた状態で用いるため、今後流速やカラムの長さの検討を行い、カラム式でも吸着率100%が維持できるか確認する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テフロン製のカラムに、CRB-05やキレストファイバーIRY-LW、キレストパールWB-150といったRh吸着材として市販されている樹脂を詰め、Rh吸着量の変化を確認した。CRB-05の吸着量が一番高く、pH 2でピークをとり、最大92%の吸着率が得られた。しかし、海水のような塩が含まれている溶液で吸着実験を行うと、Rh吸着が阻害され吸着量は半分以下となった。吸着率が大幅に低下した要因としては、塩が存在することによって、Rhの溶存形態が変化した、溶液中のイオン濃度増加によってRh錯体と樹脂との接触確率が減少した、Naイオン増加に伴い官能基の脱離効果低下が考えられた。塩化スズを添加することで、Rh(I)に還元され錯形成しやすくなり吸着率が上昇する傾向はみられた。しかし、最大でも吸着率が40%程にしかならず、これ以上の大幅な吸着率向上は困難であることがわかった。海水からRh以外の塩を全て取り除いてから樹脂に吸着させないとRh吸着は困難なことから、淡水、主に河川水中のRh分析を目指すことにした。超純水を用いてバッチ吸着実験を行ったところ、浸透時間4時間以上で100%の吸着率が得られた。また樹脂量を0.03gから0.3gにまで増やしたところ2時間の浸透で吸着率が10%程度から80%以上に向上した。実際の環境試料の濃度分析を行う場合、濃縮操作を考慮するとカラム式のほうがいいため、樹脂量を増やすことによって浸透時間が短縮できるかを今後検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
河川水や湖水中のRh分析方法を確立させる。海水のような塩が豊富に含まれている環境水では、塩の影響でRh吸着が阻害されることが確認できRh以外の塩を完全に取り除くことは困難である。そのため、塩の影響が少ない淡水を対象とし吸着・溶離条件の検討を行う。昨年度の研究で超純水中であれば100%近くRhを吸着できることが確認できているため、樹脂量や浸透時間、溶液条件の検討をさらに行い淡水であれば常に100%吸着できる条件を確立する。試料溶液を樹脂と共に長時間浸透するバッチ式よりも、樹脂を詰めたカラムに通すだけのカラム式吸着のほうが濃縮倍率も高くでき操作も簡便なため、カラム式での吸着率100%を目指す。バッチ式実験から、浸透時間を長くすれば吸着率が100%になることが確認できているため、カラム式でいかに時間短縮をして吸着率100%が実現できるか検討を行っていく。また、濃度分析するためには溶離も必要になってくるため、樹脂に吸着したRhを溶離できる条件検討を行う。予備実験からアルカリ溶液で溶離が可能であることを見出しているため、溶液の種類や濃度、量を変化させ、溶離率も100%になる条件を確立する。実験室レベルでの実験と、実際の淡水試料を用いた実験を同時並行で行っていき、実験室内で確立できた条件が、実環境にも適用できるか確認していく。
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