研究実績の概要 |
白金族元素(PGE)の一つであるロジウム(Rh)は、装飾品のメッキや自動車の触媒など、工業的に広く利用されている。自動車が普及し始めた1980年代以降、グリーンランド氷床コア中の粒子状Rh濃度が上昇したことが報告されており、水圏環境においても人為的影響が及んでいることが指摘されている(Barbante et al., 2001)。また、Rh化合物がヒトやサルモネラ菌の細胞遺伝子の損失を誘発することや葦生体内部やオオバアオサ表面に蓄積することなどが報告されている(Bonanno 2011, Turner et al, 2007)。そのため、環境中Rh濃度分布を明らかにすることは人為的な影響を解明するために重要である。しかし、環境水中の Rh 濃度は極めて低いため、Rh 濃度を分析する方法は確立されていない。陰イオン交換樹脂を用いた前濃縮と組み合わせた同位体希釈法は、迅速かつ簡便なために、微量金属濃度の測定に広く利用されている。しかし、Rhは質量数103の安定同位体が1つしかないため、この方法を適用することが出来ず、95%以上の回収率を必要とする検量線法で定量する必要がある。樹脂を用いた固相抽出法では吸着率や回収率が低いといった結果が報告されており、未だに分析方法は確立されていない(Nikoloski et al., 2014; 2015; Liu et al., 2018)。これまでの研究で、吸着剤の検討結果によりHSAB則において、硬い塩基であるメチルグルカミン基を有するCRB-05が高い性能を示した。そこで、本研究ではCRB-05を用いて、環境中の極微量ロジウムを測定するために吸着および溶媒条件の検討を行い、分離前濃縮法の確立を目的とした。
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