研究課題
令和5年度は、次世代気象気候科学基盤ライブラリーSCALEを用いて、2018年1月22日南岸低気圧による首都圏の大雪事例について水平解像度5km、27メンバーのアンサンブルシミュレーションを実施し、解析研究を行った。まず、東京近郊で降雪量の多かった事例を大雪メンバー、降雨量の多かった事例を大雨メンバーとした。大雪メンバーは実況とほぼ同じ降水期間を再現できていたが、大雨メンバーでは降水開始のタイミングが遅れ、地上気温が大雪メンバーよりも高い傾向にあった。この背景として、大雪メンバーでは大雨メンバーに比べて総観規模で日本海などの寒気がやや強く、西日本の南海上の気温場が高いことで、降雪前の関東平野の気温がわずかに低いことと、低気圧の発達しやすい環境場だった。また、大雪メンバーでは大雨メンバーに見られない先行降水があったことで、降水による非断熱冷却の影響で大気下層の気温が下がり、雪の降りやすい環境だった。大雪メンバーでは初期から大雨メンバーよりも低気圧が発達している傾向があり、西日本南海上で移動速度が速く、関東の南海上で移動速度が遅くなっていた。これにより、大雪メンバーでは先行降水がもたらされ、降水期間が長くなり、下層の冷却も効果的に起こることで大雪になっていたことがわかった。大雪メンバーでは低気圧発達初期には温暖前線に対応する低気圧中心の北東象限で降水による非断熱加熱が起こり、下層の正渦位アノマリーが形成されていた。移動速度が遅くなるタイミングでは、渦位の移流に伴って低気圧中心の北西象限で下層の正渦位アノマリ―が見られた。これらの正渦位アノマリ―が地上の低圧部形成に寄与し、低気圧の移動速度にも影響していた可能性がある。関連する研究成果や本課題での取り組みについて、一般向けの講演会や取材、書籍の執筆・刊行などを通して、アウトリーチ活動を行った。
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日本の雪氷百選
巻: 1 ページ: 38-39
CAS/JSC WGNE Research Activities in Earth System Modelling
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天気
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https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/araki/
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https://sugosugiru.kadokawa.co.jp/tenki/