最終年度は、前年度に投稿した論文の改訂を中心に行った。特に、超水滴法とバルク法およびビン法を用いた場合の計算時間の比較について、より公平な比較となるように、バルク法の「バグ」の除外や、追加の条件を含めた上で徹底的に行った。 研究期間全体としては、当初の目的でもあった雲微物理解像の先端的数値モデルについて、超水滴を用いたメートルからサブメートルスケールの数値シミュレーションが可能な数値モデルを構築した。構築した数値モデルは、従来の雲微物理スキームであるビン法より高速かつバルク法に匹敵する計算性能をもつ。また雲と乱流の相互作用をコントロールするパラメータの精度を引き上げる、最適輸送理論を用いたサンプリング手法の導入や、超水滴密度の空間一様性を改善する高精度移流スキームの開発を行った上で、スーパーコンピューター「富岳」上で高いレベルの最適化を行い、直接数値実験(DNS)とラージ・エディ・シミュレーション(LES)のスケールギャップをつなげる解像度領域(メートルからサブメートルスケール解像度)の計算が可能なことを実証した。ここまでの研究成果は、Geoscientific Model Development で出版された。 一方、開発した数値モデルは、直交座標系・平坦な領域に特化させて最適化を行ったという特徴があるため、そのままでは、地形の起伏がある場合や全球領域の気象・気候シミュレーションに応用することはできない。しかし、論文出版後の考察により、開発した数値アルゴリズムの適用範囲を大きく拡げる可能性を見出すこともできたので、次のステップに向けて引き続き検討を進めていく計画である。
|