研究課題
巨大な海溝型地震の活動は周囲の応力場にも影響を与え、その結果として内陸地震活動を誘発する可能性も示唆されている。例えば、2011年東北沖地震津波の直後には福島県で内陸地震が発生した。しかしながら、巨大海溝型地震は観測記録が得られる範囲を超える数百~千年程度の発生頻度を持つため、過去に発生してきた巨大海溝型地震によって内陸地震活動にどのような影響があったのかは十分に理解されていない。そのような長期の地震履歴を知るためには地質学的な記録が重要であるが、過去数万年間の年代推定に一般的に活用される放射性炭素年代測定の精度の問題もあり、地震活動の関連性を検証するために十分な精度での年代推定は困難である。上記の問題を解決するために、本研究では多点数の放射性炭素年代測定に基づく高精度年代推定法を用いて、東北地方の古地震痕跡(海溝型地震:津波堆積物、内陸地震:活断層)の年代について精査を行った。また最終年度は遺跡の発掘調査等で認められた過去の強振動の痕跡(例えば、噴砂や地割れ)にも着目し情報収集を行った。既往研究および本研究で実施された年代測定結果についてはベイズ推定を活用した統計解析により高精度での年代推定を行った。以上の成果から、東北地方の陸域に残された古地震・古津波痕跡を網羅的に集約することができ、それらの年代対比も実施できるようになった。特に強振動の痕跡については、痕跡の下限もしくは上限年代しか定まらないものも多く、正確な対比は困難な部分もあるが、地震・津波について複数のプロキシの年代から、その同時性等を議論できた。これらの情報は、当該地域の古地震履歴を議論する上で有益なものであると考えられる。
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Quaternary Science Reviews
巻: 279 ページ: 107381~107381
10.1016/j.quascirev.2022.107381
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/02/press20220203-sanriku.html