研究課題/領域番号 |
20K14562
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大澤 光 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70839703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 豪雪地帯 / 積雪水量 / 間隙水圧 / 選択流 / 側方流 / 現地調査 / トレーサー試験 |
研究実績の概要 |
本年度は1年目ということで、これまでに観測したデータを用いて解析を行い、また令和2年12月に流量計を設置するとともに令和3年3月に積雪層を対象としたトレーサー試験を行った。 地すべり地において既設の間隙水圧計やライシメータ(地表面到達水量)、各種気象センサーによる観測結果を用いて、気候変動に伴う積雪が地すべりに及ぼす影響を明らかにするため、多雪年と少雪年の間隙水圧の応答を抽出し、比較した。解析対象は、多雪年であった2014-2015年の冬期期間154日および少雪年であった2019-2020年の冬期期間131日であり、それぞれ最大積雪深・最大積雪水量は498 cm・2250 mmmと220 cm・1180 mmであり、多雪年は少雪年の2倍程度であった。それぞれの積雪期間における降水因子を調べたところ、多雪年は1月から3月中旬まで、雪として雪面へ到達し、3月中旬以降はほぼ雨として雪面は水分を供給していた。それに対して、少雪年は1-2月の厳冬期においても雪と雨が混在する時が多く、2月中旬以降は純粋に雪として雪面へ至ることはほぼなかったことがわかった。なお、本成果に関する研究発表を行い、日本地すべり学会第59回研究発表会若手優秀発表賞を受賞した。 積雪斜面にて積雪調査及び着色トレーサー試験をおこなった。その結果、雪質はほぼ全層ざらめ雪が占めていたが、層間には薄い氷板が数カ所存在した。トレーサー試験の結果は、対極的に鉛直浸透よりも側方浸透が卓越しており、約10 m斜面下方へ流動していた。散水範囲直下では、マトリクス流として一様に鉛直浸透している様子が観察されたが、特に氷板を止水面として側方流動している様子がよく見られた。また、粒径の異なる層境界では毛管障壁が発生し、フィンガー流や側方流に影響を及ぼしている様子も観察された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、新潟県上越市伏野地すべり地および森林総合研究所十日町試験地にてトレーサー試験を行う予定であった。伏野地すべり地におけるトレーサー試験は行えたものの、1週間程度研究協力者と集まり現地試験を行う予定であった十日町試験地では新型コロナウイルス感染症防止のため、現地実験を中止した。以上の理由により、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
地盤内の飽和・不飽和状況と地すべりの挙動を明らかにするため、気象観測や地表面到達水量、流量、土壌水分および地すべり面直上における間隙水圧を無雪期も含めて連続観測する。また、斜面と地形の遷緩線における積雪層内の水移動プロセスを明らかにするため、積雪調査および着色トレーサー試験を積雪期に行う。斜面の凸凹によって積雪内の含水状態が変化すると考えられることから、地形による積雪内の水みちの時空間的な変化を明らかにするため、ドローンによる空撮をおこない、雪窪発達特性の地形的解析を行う。
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