研究課題/領域番号 |
20K14563
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山中 悠資 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60815108)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 津波 / 水槽実験 / 数値実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、水槽実験と数値実験の結果に基づき、沿岸域において観測される津波波形を用いた波源推定技術を高度化させることを研究の目的としている。 本年度は主に水槽実験を行い、定量的な計測データを蓄積した。水槽実験では断面二次元水槽を用い、水槽内に設置したゲートの急開(ダムブレイク)により津波を想定した段波を発生させることができる。波高や波形勾配が異なる様々な段波を発生させ、その水位変動および伝播過程を計測した。このようにして得られた実験結果に対して数値計算に基づく再現計算を行った。発生させた段波は水槽内の初期水深条件などに応じて様々な形態に遷移しながら伝播するが、その再現に適した数値モデルを選択して用いることで、実験結果を数値計算により比較的良好に再現できることを確認した。 1906年にコロンビア沖で発生した地震津波の波源を、沿岸域で観測されたその津波波形に基づき推定した。その推定波源をスケーリングしながら様々な規模の波源を仮想的に想定し、それらの伝播を二つの異なる数値モデル(線形長波モデルおよび非線形長波モデル)に基づき推定した。これらの結果に基づき、沿岸域で観測されることが期待される波形を両モデルから推定したところ、津波による水位上昇量が大きくなるほど期待される波形のズレが大きくなった。これは津波の非線形性の考慮の有無により生じる結果である。また沿岸域で数十cm程度の比較的小規模の津波でも、得られる波形は数値モデルによって異なることが確認された。この結果、観測津波波形に基づく波源推定において、津波の非線形性の影響を評価することの重要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は様々な波動条件の下で水槽実験を行い、波源逆推定技術の分析・検討に向けた定量的な計測データを蓄積した。また数値実験を行い、沿岸域における津波波形と推定される波源の特性について分析した。おおむね当初の計画に沿って研究を進められていることから、順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
水槽実験を継続し、津波伝播に関する定量的な計測データを充実させる。それに並行して、水槽実験の結果を用いながら再現計算や波源推定の数値実験を行い、推定される波源や波源推定技術の特性について詳細に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症流行の影響で予定していた実験が一部実施できず、これに伴って実験とその解析に向けた助成金の使用を一部先送りにしたことにより次年度使用額が生じた。 令和3年度も令和2年度に引き続き水槽実験を行う予定であり、生じた次年度使用額は令和3年度分の助成金と合わせて、水槽実験およびその解析に関する物品調達に使用する予定である。
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