本年度は二価鉄と三価鉄の含有量が緑泥石の積層構造に与える影響を明らかにした。マグネシウム成分に富む緑泥石と鉄成分に富む緑泥石中の二価鉄と三価鉄の含有量比と積層構造及び積層構造の温度変化の関係を詳細に比較したところ、鉄成分に富む緑泥石の場合には、総鉄含有量に対する三価鉄の含有量比が高い場合には、緑泥石は安定ではないことを示した。 さらに、この結果と先行研究で報告されている結果と比較し、総鉄含有量に対する三価鉄の含有量比と鉄成分とマグネシウム成分の含有量比(Fe /(Fe+Mg))と関係していることが明らかにした。マグネシウム成分に富む緑泥石(低Fe/(Fe+Mg)比)の場合には、非常に幅広い三価鉄含有量比を持つ純粋な緑泥石が存在するが、鉄成分に富む緑泥石(高Fe/(Fe+Mg)比)になるにつれて、三価鉄含有量比の報告値が低くなる傾向が見られた。特に非常に鉄成分に富む緑泥石では鉄含有量に対する三価鉄の含有量比は約0.2に収束することを示した。この値は、鉄緑泥石の結晶構造中に三価鉄が安定に存在することができる八面体イオン席を三価鉄が完全に占有すると仮定した時の値と一致する。このことは、緑泥石の総鉄含有量に対する三価鉄の含有量比は構造的に規定されていることを示唆しており、緑泥石の安定性と三価鉄含有量が関係していることを明確に示している。さらに、三価鉄含有量は緑泥石化の前駆体鉱物の違いとも関係していると考える。緑泥石積層構造のナノスケール解析と化学組成との比較により緑泥石と緑泥石に関連する鉱物の安定性がFe /(Fe+Mg)比及び三価鉄含有量に依存することが明らかになった。本研究の結果を現在論文として投稿準備中である。
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