研究課題/領域番号 |
20K14565
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
溜渕 功史 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 研究官 (50782439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地震カタログ / 自動震源決定 / 微小地震活動 / 機械学習 / アンサンブル学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,2011年3月以降の地震波形に対して,同時多発地震に対応した自動震源推定手法を適用し,“隠れた”微小地震活動を検出することで,巨大地震発生後の微小地震活動の特徴を明らかにすることを目的としている. 本年度はまず,自動震源推定プログラムにおけるファイル入出力負荷の改良を行い,処理の高速化を行った.東北地方太平洋沖地震後の地震波形に適用したところ,高速化により従来に比べて約1.5倍の速さで処理が行えることを確認した.これにより長期間の地震波形に対して,効率的に処理を行うことが可能となる. 次に,自動震源に含まれるノイズの特徴を把握するため,自動震源推定手法で決定した微小地震波形画像の作成,目視による地震・ノイズの分類を行い,機械学習に必要なデータの整備を行った.これにより自動震源には,ノイズ等の誤検知が5%程度含まれることが分かった.さらに,得られた学習データを用いて,機械学習の一種であるアンサンブル学習(ランダムフォレストとAdaBoost)によってノイズの頻度を低下させることを試みた.学習の結果,AdaBoostでは震源決定数を99%以上保ったまま,ノイズを約1/5(全体の1%に相当)に低減できた.これは自動震源による地震活動のモニタリングやカタログ作成の効率化に大きく貢献できる.地震波形そのものの学習には学習コストが大きいが,本研究では地震波の読み取り時刻(P波やS波)などの検測値と呼ばれる情報のみを用いて,効果的にノイズを低減することに成功した.本成果を国際学術誌に投稿し,原稿改訂作業を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラムの高速化,ノイズ識別手法の開発を初年度で着実に実施することができ,またその成果を国際学術誌に投稿するなど,順調に推移している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は,まず国際学術誌に投稿した機械学習による地震ノイズ判別の論文出版を行う.次に,高速化したプログラムを長期間の連続地震波形に適用し,自動地震カタログの作成を行う.また,深層学習による地震波検測手法を調査し,本自動処理プログラムに取り込むことを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症による国内外学会のオンライン化に伴い,時差を考慮して国際学会の参加を見送ったことから,次年度使用額が生じた.これらは来年度の成果発表のための旅費及び投稿料等に使用する予定である.
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