研究課題/領域番号 |
20K14565
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
溜渕 功史 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (50782439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地震カタログ / 自動震源決定 / 微小地震活動 / 機械学習 / ETASモデル |
研究実績の概要 |
本研究では,2011年3月以降の“隠れた”微小地震活動を検出することで,巨大地震発生後の微小地震活動の特徴を明らかにすることを目的としている.昨年度までの解析に得られた総数93万個の自動震源カタログ(期間は2011年3月から1年間)には発破による振動波形が含まれていたことから,既知の発破波形との相互相関により約16,000個の発破イベントを抽出し,カタログから除外した.さらにアンサンブル学習によりノイズや誤決定を除去し,既存の地震カタログとの比較・統合により,約92万個の微小地震カタログが得られた.既存の地震カタログは約32万個なので,本研究により大幅に地震の検知力が向上したことを示した. また,秋田県北部や岩手県釜石沖などの領域に対して,波形相関を用いた相対的な精密震源決定手法(Double-difference法)を適用し,詳細な震源分布の解析を行った.これらの解析により,微小な群発地震の移動,小規模な前震活動,繰り返し地震発生前の微小地震の活発化などの特徴が従来よりも明確になったことを確認した.これらの成果は国際誌であるEarth Planet and Spaceに投稿し,受理,公開された. さらに,得られた微小地震活動をETASモデルにより定量化し,東北地方太平洋沖地震後の日本全国の平均的な地震活動の変化を評価した.その結果,平均的には東北地方太平洋沖地震前のETASモデルパラメータによる予測値よりも,2-3倍程度多く発生したことを示した.これらと地殻変動等との空間相関を計算し,ひずみ速度変化との相関が0.3-0.4程度みられることを示し,AOGS,IUGG等の国際学会で発表し,議論を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は自動震源カタログから発破を除去するなどより洗練させたうえで,論文が公開されるなど大きな進捗があり,当初の目的は概ね達成したものと考える.一方,巨大地震後の微小地震活動の特徴をさらに検討するため,微小地震活動の定量化と地殻変動等との比較を引き続き進める.そのため,研究期間を延長し,論文執筆等に取り組む.
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今後の研究の推進方策 |
微小地震活動の定量化の論文執筆に取り組む.また,本研究で開発したアンサンブル学習によるノイズ識別手法が微動等の他の現象にも一般化できるかについても検討し,学会等で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの新型コロナウィルスの感染拡大に伴い国際学会の参加を見送っていたことから,次年度使用額が生じた.これらは来年度の成果発表のための旅費及び投稿料等に使用する予定である.
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