研究課題
本研究は、地球深部に存在が予想されている鉄水素化物の安定性や結晶構造、取り込まれる水素量を高温高圧その場実験によって実験的に解明するものである。鉄水素化物は一気圧では水素を放出することや相対的な存在量が少ないことから天然での発見や観測が困難である。そこで本研究では、地球深部条件下における鉄水素化物の安定性や結晶構造、取り込まれる水素量を高温高圧その場実験によって実験的に検証した。最終年度では、これまで高温高圧下における中性子回折実験で取得した六方最密構造(hcp)の鉄水素化物のデータ解析を行った。中性子回折実験によってhcp鉄水素化物中の水素は、鉄原子がつくる格子の八面体の隙間に存在することが明らかにり、純鉄との格子体積の差を表す水素誘起体積膨張は大きな温度依存性があることが明らかになった。これらのことは鉄水素化物の熱膨張率は純鉄よりも大きなことを示している。これまでの地球核の水素量のモデルでは、熱膨張率は無水素のものが使用されており従来考えられているよりも地球核の水素量は少ない可能性がある。研究計画全体を通じて、マントル遷移層条件における鉄水素化物の安定性や結晶構造などの基本的な知見を得ることができた。放射光X線回折実験からhcp鉄水素化物は低水素量条件においてのみ存在しその温度圧力安定性は高水素条件で安定なdhcp鉄水素化物と同程度であることを見出した。また、中性子回折実験から水素は八面体位置に存在し、水素誘起体積膨張は大きな温度依存性があることが明らかになった。また、研究期間を通じて実験可能な温度圧力条件拡大を目指し技術開発を行った。これらの技術は鉄に限らず水素貯蔵合金などの研究に応用されることが期待される。
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Earth and Planetary Science Letters
巻: 634 ページ: 118673~118673
10.1016/j.epsl.2024.118673
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
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