研究実績の概要 |
過去の地球現象を読み解く上で、岩石や鉱物のもつ地質年代情報は最も重要な指標の一つといえる。そこで、本研究はジルコンという鉱物粒子を対象とし、アニールと呼ばれる焼きなまし処理を組み合わせた高確度LA-ICPMS年代測定技術の確立を目指す。本年度の研究実施状況として、昨年度から予定していたジルコンのアニール処理法の検討を行った。 本研究では太古代地質体(南アフリカ/豪州/インド)に産するジルコン試料を研究対象とした。いずれのジルコン試料についても顕微鏡観察およびラマン分光分析から顕著なメタミクト化の影響が確認された。これらのジルコン試料を900/1000/1100度のそれぞれ温度条件でアニール処理を施した後、ラマン分光分析によってジルコンの結晶性を評価した。初年度の予察分析結果から推察されるように結晶性の回復が認められた一方、いわゆるジルコン標準試料に比べて格子欠陥の影響が少なからず確認された。この結果は3次元アトムプローブを用いた先行研究(Valley et al., 2014)が示唆するように、ナノスケールの格子欠陥の存在と調和的である。そのため、過度のメタミクト化を被ったジルコン試料では、アニール処理を施した場合にも充分な結晶性の回復が望めないことが新たに分かった。以上、これらの研究成果は高確度LA-ICPMS年代測定法を確立する上でアニール処理に加えて、U-Pb元素分別を抑えたレーザー発信装置の開発が必要となることを意味する。現段階では、レーザー機器の開発まで着手できていないが、本年度から常勤講師として京都大学に着任し、これらの研究を推進していく上での研究基盤を築けたのは大きな成果の一つといえる。
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