研究課題/領域番号 |
20K14575
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永冶 方敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10795222)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンチゴライト蛇紋岩 / 前弧マントルレオロジー / 結晶軸選択配向(CPO)形成機構 / 異方性 / 変形機構 / 脱水分解実験 |
研究実績の概要 |
本研究では、沈み込み帯においてウェッジマントルと呼ばれる、沈み込むプレートの上方に位置するくさび形の上部マントルが研究対象領域である。ウェッジマントルでは沈み込むプレートから供給される水流体によって含水し、アンチゴライトと呼ばれる蛇紋石の一種が形成することで蛇紋岩(アンチゴライト蛇紋岩)が分布することが予想されている。そのため、含水鉱物であるアンチゴライトやアンチゴライトを含む蛇紋岩の物性や構造を明らかにすることは、含水化したウェッジマントルの物性や構造を理解する上で重要となる。 これまで変形実験や天然の蛇紋岩試料中の観察・分析から、アンチゴライトの結晶軸はウェッジマントルで強く配列する一方で、その結晶軸の配列パターンは複数種類存在している可能性が指摘されている。今年度、昨年度に引き続き国内の複数地域において野外調査、および国内外の天然の蛇紋岩試料を用いたアンチゴライトの結晶方位測定を実施した。今年度、これらの解析も進め、これまでに報告されている複数地域・岩石からのアンチゴライトの結晶軸の配列パターンとの比較から、特定の結晶軸の配列パターンについて形成メカニズムをまとめた。来年度これらの成果を査読付き国際誌へ投稿する予定である。 また蛇紋岩分布領域で温度上昇に伴う脱水分解過程とこれに関連した岩石構造の変化に関しても、天然の蛇紋岩試料の観察・分析からのアプローチに加え、天然の蛇紋岩試料を使用して実験的なアプローチからも調査しており、今年度これらの研究成果をまとめた。これはウェッジマントルにおける蛇紋岩の脱水過程と構造変化を検討する上で重要な知見が得られる可能性がある。来年度も引き続き実験的なアプローチからもウェッジマントルの構造推定を進め、成果を査読付き国際誌へ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【野外調査および試料採取】 昨年度に引き続き、国内の複数地域に対して野外調査を実施し、アンチゴライトの結晶方位の配列パターンを把握するのに十分な岩石試料を採取した。 【鉱物の結晶方位測定】 昨年度に引き続き、国内外の複数地域から採取された岩石試料の結晶方位測定を行い、岩石試料表面の結晶軸の方向の詳細なマップ化に成功した。本研究課題の遂行に必要な採取岩石試料のうち、国内試料のほとんどに関して本年度、測定を完了することができた。 【アンチゴライトの結晶軸の配列パターン】 今年度、これまでに測定された国内の岩石試料中のアンチゴライトの結晶軸の配列パターンについて解析を進め、特定の結晶軸の配列パターンについて形成メカニズムをまとめた。来年度これらの成果を査読付き国際誌へ投稿する予定である。 【脱水分解実験】 蛇紋岩分布領域で温度上昇に伴う脱水分解過程とこれに関連した岩石構造の変化を天然の蛇紋岩試料を用いて実験的に調査した。来年度も引き続き実験的なアプローチからもウェッジマントルの構造推定を進め、成果を査読付き国際誌へ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【野外調査および試料採取】 今年度までに実施できなかった一部の地域に対して野外調査を実施する予定である。 【アンチゴライトの結晶軸の配列パターン】 これまでに採取された国内外の複数地域から採取した岩石試料を使った分析・解析を引き続き実施する。それぞれの岩体及び岩石の地質学的・岩石学的・構造岩石学的な情報から、鉱物の変形機構とそれによって形成されるアンチゴライトの結晶軸の配列パターンを含むウェッジマントルでの岩石構造を推定する。 【脱水分解実験】 来年度も引き続き実験的なアプローチから蛇紋岩の脱水分解過程とこれに関連した岩石構造の変化を推定し、ウェッジマントルの構造推定を進める。 また、本年度までに得られた成果を含め、これらの研究成果を査読付き国際誌に投稿し公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用計画からは新型コロナウイルス感染症の影響に伴って国内及び国外の岩石試料採取計画に変更が生じたため、翌年度分と合わせて来年度国内外の岩石試料採取およびそれら採取岩石試料の分析費用に使用する予定である。
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